日本臨床免疫学会会誌
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3種の臓器特異性自己免疫疾患を合併し抗IgA抗体と赤血球結合IgAが陽性であったIgA単独欠損症の1例
市川 幸延内山 光昭有森 茂小川 純一井上 宏司小林 信昌渡辺 克仁
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1987 年 10 巻 3 号 p. 309-317

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抄録
私達は3種の臓器特異性自己免疫疾患(重症筋無力症,自己免疫性溶血性貧血,自己免疫性甲状腺炎)を合併したIgA単独欠損症の成人例を経験し報告した. IgA単独欠損症はしばしば自己免疫疾患を合併することが知られているが,私達の検索し得た限りでは本例のように多数の自己免疫疾患を合併した報告は見当らない.
本例は血中IgAが著しい低値(5mg/dl以下)を示し,血中抗IgA抗体が高値を示した.直接クームス試験では赤血球表面にIgG, IgA, IgMおよび補体成分が検出でき,赤血球表面に結合したIgAの存在は赤血球からの解離液を用いたenzyme-linked immunosorbent assayでも確認できた.しかし,このIgAが真の抗赤血球抗体であるのか,免疫複合体として赤血球のC3bレセプターに結合しているのかは不明である.
重症筋無力症に対して施行した胸腺摘出術後に敗血症と溶血発作を併発したが抗生剤と副腎皮質ホルモン治療により改善した.副腎皮質ホルモン投与により重症筋無力症や自己免疫性溶血性貧血は改善したが血中IgA値は不変であった.なお,摘出胸腺は中等度に退縮しリンパ濾胞形成が認められた.本例の重症筋無力症に対して胸腺摘出術は術後30ヵ月の観察では有効と考えられた.
本例の唾液中IgAは低値で,末梢血IgA陽性Bリンパ球は存在したが, PWM刺激によりIgA産生細胞は出現しなかった.
本例はIgA単独欠損症,あるいはその合併症についていくつかの臨床的,免疫学的な示唆を提供するものと老えられる.
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