抄録
通常のCO2交換測定装置では評価が不可能なCAM植物 (パインアップル (Ananas comosus) を含む12種) の明期における葉内部の光合成活性を, 気相型酸素電極および補償型赤外線CO2交換測定装置を用いて検討した.5%のCO2濃度下で測定した場合, パインアップルの酸素放出速度は1500μmol m-2s-1PPFDで光飽和し, その最大値は通常のガス交換速度で得られる値の約10倍の60μmol m-2s-1であった.また, 飽和光下の酸素放出速度はCO2濃度が3%までは上昇を続け, 4%以上では低下した.しかしながら, 他のCAM植物ではそのようなCO2濃度上昇に伴う酸素放出速度の増加は小さかった.次に, 補償型CO2交換測定装置を用いて, 高CO2濃度条件下でパインアップルのCO2交換速度を測定したところ, CO2の取り込みは明期のPhase IIIだけではなく暗期のPhase Iにおいても増大することがわかった.以上の結果に基づき, CAM植物, 特にパインアップルにおけるCO2取り込み速度の更なる上昇の可能性を, 気孔の機能やリンゴ酸の貯蔵容量の観点から考察した.