日本臨床免疫学会会誌
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本邦における伝染性単核球症と伝染性単核球症症候群
自験55例の臨床病理学的検討
福田 亙里村 由紀子笠松 美宏小野寺 秀記赤荻 照章迫 雅美原 洋林 英夫
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1988 年 11 巻 1 号 p. 45-54

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抄録
伝染性単核球症症候群(IMS)にはEpstein-Barr virus (EBV)の初感染による伝染性単核球症(IM)とそれ以外の原因で起こるものがある.本邦のIMSは欧米のそれと臨床像が異なるとされているが,その詳細な検討はなされておらず,われわれはその臨床像を明らかにするため以下の研究を行った.
〔対象と方法〕1982年1月から1985年9月の当院外来および入院患者で末梢血白血球数の10%以上の異型リンパ球増多を示した55名(男31,女24)に免疫螢光抗体法によるEBV関連抗体の検索を行い,その結果から以下の4群に分け,臨床所見を検討した. Groupvl (IM); Early antigen (EA)またはViral Capsid antigen (VCA) IgMが陽性でEBV初感染が証明できるもの. Group 2; VCA IgGのみ陽性でEBVの関与を判断しえぬもの. Group 3; anti-EBV associated nuclear antigen (EBNA)が陽性または全抗体陰性でEBV初感染の関与を否定しうるもの.
Group 4;麻疹, A型肝炎(HA)などEBV以外の原因が明らかなもの.
〔結果〕年齢はGroup 1では10歳以下と20歳代に二峰性に分布, Group 2, 3は10歳以下に多かった. Group 1では明らかな白血球と異型リンパ球の増加があるが, Group 3のそれは軽度で,臨床症状もGroup 1は欧米のIMと差がなく, Group 3ではその頻度が低く経過も短い. Paul Bunnel反応(PBR)はGroup 1の27%, Group 3の11%が陽性, Mono Spot Test (MST)陽性率はGroup 1, 2, 3で各82%, 77%, 33%であった. HAの肝機能はGOTとγ-GOTの増加が主で, IMではアルカリフォスファターゼとγ-GPTが増加, Group 3ではその変動が小さかった.免疫グロブリンはIMでIgEを含めすべて増加, Group 2, 3ではその増加は軽度でIgEにはみられず.リンパ球表面マーカーの検索では全群でOKT 4/8比の低下がみられ, IMではOKTIa 1陽性細胞が増加していた.
〔考案と結論〕本邦のIMSで, IMはGroup 1とGroup 2の一部であると考えられ,全症例の1/2にみたず,その臨床像は10歳以下にも好発することを除き欧米のIMと同様であった. IMの肝機能障害は胆道系酵素の上昇が主でその組織学的変化と合致した.免疫グロブリンはIMですべて増加しとくにIgEでは薬物過敏やFc-ε受容体発現との関連が示唆された. EBV以外によるIMSが全症例の1/2以上で,さらにその1/2以上を占める原因不明のIMSは10歳以下の小児に多く, IMに比し症状,検査所見は軽微でIgE増加はみられない. MSTはIMに必ずしも特異的ではないが,その診断に有用であった.
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