抄録
SLE 26例, 40妊娠(満期産11回,早産12回,自然流産13回,人工流産4回)を対象に,妊娠,出産がSLE活動性に及ぼす影響を検討した.妊娠前,後各1年をコントロール期間とし,活動性スコアーおよび再燃回数で検討した.活動性を臨床症状,検査成績,腎病変に分けて検討すると,腎病変は妊娠中に悪化する傾向がみられた.正常満期産,異常妊娠ともに約40%の症例で腎症が悪化した.妊娠前,中,後の再燃回数の比較では,臨床症状,検査成績では差がなかったが,腎症は妊娠中の再燃回数が有意に増加した.異常妊娠のうち早産群では妊娠中の検査成績と腎症の再燃回数が満期産に比べ有意に高かった. SLE妊娠中のβ1C値の変動をみると異常妊娠ではその値が低値をとり続ける例が多く, β1C値は,妊娠予後推測に重要な指標と考えた.
以上,妊娠,出産は腎症の増悪因子であるが,腎以外の活動性には影響を及ぼさないと考えられた.