日本臨床免疫学会会誌
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Epstein-Barr Virusによってトランスフォームされた自己抗体産生細胞株
奥山 芳夫横山 新吉林 正
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1989 年 12 巻 3 号 p. 311-319

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抄録
〔目的〕生体内に自己抗体産生能を有するB細胞クローンが比較的多く存在するという報告がある.自己抗体産生細胞が生体内のB細胞集団内に占める割合を知ることは, B細胞のレパートリーや自己免疫疾患を考えるうえで重要なことである.しかし,その割合は,まだ十分には確かめられていない.われわれはヒト骨髄細胞を用いて,従来の方法よりも効率よく,ヒトB細胞由来の細胞株を多数樹立した.これらの細胞株の分泌する免疫グロブリンの自己抗原との反応性を検討し,自己抗体産生細胞のB細胞集団内での頻度を求めた.
〔方法〕1) B細胞株の作製:完全寛解期にある3人の悪性腫瘍患者の骨髄穿刺液より単核細胞を分離し, Epstein-Barr Virus (EBV)を感染させ,感染したB細胞が1 wellに1個となるようにマイクロプレートに播き込んだ. feederとして, X線照射自己骨髄単核細胞を同時に加えた.週2回の培地の半量交換を行って培養を維持し, 4~6週後に細胞増殖が十分となったwellから培養を拡大し, 5mlとなったときに上清を回収した. 2)抗体活性の測定:総IgM, IgGはradioimmunoassay (RIA)により測定した.細胞内抗原に対する抗体測定は,メタノール固定ヒト線維芽細胞を標的として間接螢光抗体法により行い,細胞表面抗原に対する抗体測定は,ヒト白血病細胞株(NALL-1, HL-60)や自己赤血球を標的として, RIAと間接螢光抗体法で行った.
〔結果〕1,728 wellに播き込み, 134 (7.8%)の細胞株を得た.このうち111の細胞株の培養上清につき抗体活性測定を行った. IgM抗体産生細胞株は82で,このうち21株(26%)が,中間径フィラメント,微小管,細胞質,細胞内顆粒,ミトコンドリア,核,核小体,などの細胞内構造物と反応するIgMを産生していた.細胞表面抗原との反応は間接螢光抗体法では検出できず, RIAでのみNALL-1と自己赤血球に対する反応が検出された.
〔考察〕われわれの得た細胞株は播き込んだB細胞の7.8%にあたる.これらの細胞株培養上清解析の結果, IgM産生細胞株の26%が自己抗体と反応することがわかった.これはIgM産生生体B細胞の多くの部分が自己抗体産生能を有することを意味し,きわめて興味深い現象である.今回もちいた培養系は,ヒトB細胞レパートリーの解析に有用な方法と思われる.
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