日本臨床免疫学会会誌
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成長ホルモン分泌不全児の成長ホルモン補充療法に伴う免疫能の推移
藤枝 幹也脇口 宏荒木 久美子倉繁 隆信
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1989 年 12 巻 6 号 p. 615-622

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抄録

成長ホルモン(GH)の免疫系に及ぼす影響を検討する目的で, GH分泌不全児12例について, GH(組み換え型GH, Somatrem:住友製薬)補充療法(週0.5U/kg週2~4回筋注)開始後のnatural killer (NK)活性,賦活NK活性, NK活性に対する抑制細胞能, lymphokine activated killer (LAK)活性および末梢リンパ球表面マーカーを測定し,治療前および正常対照34例と比較し,以下の結果を得た.
1.治療前低値であった患児12例のNK活性は,治療後上昇し,対照児と差がみられなくなった.同一患児では,治療後は,治療前に比し活性は上昇し,治療6ヵ月後は,前に比して,有意(p<0.05)に高値であった.
2.賦活NK活性およびNK活性に対するprostaglandin E2産生抑制細胞能は,治療前後で変化がみられず,患児と対照児の間で差がみられなかった.治療期間による差もみられなかった.
3.治療前,低値であった患児9例のLAK活性は,治療後上昇し,対照児と差がみられなくなった.同一患児では,治療後は治療前に比して有意(p<0.05)に高値を示した.
4.検討できた患児11例のLeu 7陽性細胞は,治療前後を通じて,対照児に比して有意(p<0.05)に低値が持続した. OKT3, OKT4, OKT8陽性細胞, OKT4/OKT8比は,治療前後で変動はみられず対照児と差がみられなかった.
以上のごとく, GH補充療法に伴い, GH分泌不全のNK, LAK活性の回復がみられたが,細胞表面マーカーには変化がみられなかったことから, GHがkiller細胞の数でなく機能の調節に関与していることがうかがわれた.

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