1989 年 12 巻 6 号 p. 653-657
脾摘後に肺炎球菌や髄膜炎菌によって重篤な敗血症がおこり, overwhelming post-splenectomy infection syndrome (OPSI)として知られている.このため脾臓の感染防御機能を温存するため脾摘時に脾臓の自家移植術が考案されている.われわれは自己免疫性好中球減少症に血小板減少症を合併したcombined immunocytopeniaの症例に対して,脾摘後のOPSIを考慮して脾摘および脾臓自家移植術を施行したが,術後約1ヵ月でOPSIにて死亡した症例を経験したので報告する.症例は30歳,男性. 24歳から好中球減少のため感染症状を繰り返していた.今回咽頭炎のために入院し,抗好中球抗体陽性のため自己免疫性好中球減少症と診断された.経過中血小板減少症を合併し,さまざまな内科的治療が無効のため,脾摘および脾臓自家移植術を施行したが,術後約1ヵ月でOPSIにて死亡した.このことから脾自家移植術のOPSIに対する予防効果には限界があり,細菌ワクチンなどを併用することが重要であると考えられた.