日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
脾摘および自家脾臓移植術後Overwhelming post-splenectomy infection syndrome (OPSI)にて死亡したcombined immunocytopeniaの1例
小林 茂人寺井 毅田中 光彦菅谷 直樹杉本 正邦若林 芳久廣瀬 俊一
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 12 巻 6 号 p. 653-657

詳細
抄録

脾摘後に肺炎球菌や髄膜炎菌によって重篤な敗血症がおこり, overwhelming post-splenectomy infection syndrome (OPSI)として知られている.このため脾臓の感染防御機能を温存するため脾摘時に脾臓の自家移植術が考案されている.われわれは自己免疫性好中球減少症に血小板減少症を合併したcombined immunocytopeniaの症例に対して,脾摘後のOPSIを考慮して脾摘および脾臓自家移植術を施行したが,術後約1ヵ月でOPSIにて死亡した症例を経験したので報告する.症例は30歳,男性. 24歳から好中球減少のため感染症状を繰り返していた.今回咽頭炎のために入院し,抗好中球抗体陽性のため自己免疫性好中球減少症と診断された.経過中血小板減少症を合併し,さまざまな内科的治療が無効のため,脾摘および脾臓自家移植術を施行したが,術後約1ヵ月でOPSIにて死亡した.このことから脾自家移植術のOPSIに対する予防効果には限界があり,細菌ワクチンなどを併用することが重要であると考えられた.

著者関連情報
© 日本臨床免疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top