日本臨床免疫学会会誌
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Procainamideおよびquinidineの長期投与後に発症したSLE様症候群の1例
中村 稔土屋 喜裕大島 道雄大久保 英雄石丸 敏之下野 信行
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1991 年 14 巻 2 号 p. 186-194

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抄録
Procainamideとquinidineにより誘発されたと考えられるSLE様症候群の1例を報告する.症例は38歳の女性で,昭和59年より原因不明の心室性不整脈が頻発し,抗不整脈剤のquinidineとprocainamideの投与を開始されたが,昭和63年より朝のこわばり,筋肉痛,筋力低下が出現し歩行困難となり,昭和63年8月,当科入院.入院時,全身の筋肉痛が顕著で右眼の強膜炎も認めた. Hb8.7g/dl, WBC3,200/mm3, Thrombo. 10.7×104/mm3と汎血球減少を認め,血沈は132mm/hと著明に亢進し, γ-globulinも26.0%と増加, CPK, alddaseなどの筋原性酵素も増加していた.また, lupus anticoagulantが陽性で, LE-testおよびLE細胞も陽性であった.抗核抗体は, 5,120倍と上昇し,その染色パターンは,主にhomogeneous typeであり,胸線由来の精製ヒストンを用いたwestern blottingにて,ヒストンのH1, H2B, H2Aと強く反応するIgG抗体を認めた.その他, PAIgG,抗ssDNA抗体が陽性であった.薬剤誘発SLE様症候群を疑い, quinidine, procainamideをただちに中止するも,自・他覚症状が改善しないため,入院1ヵ月後より, prednisolone 40mg/dayの投与を開始した.投与開始後,著明な自覚症状の改善を認めたが, prednisolone漸減中に, SLE様症状が再燃し,検査所見が正常化するまでに, 6ヵ月以上にわたるprednisoloneの長期投与が必要であった.そのため,自然発症SLEとの鑑別が問題となったが, procainamide, quinidine投与開始前には, SLEを疑わせる異常所見はまったく認めず,また,自己抗体のパターンなども, quinidineおよびprocainamide誘発SLE様症候群の特徴を兼ね備えており,両薬剤により誘発されたSLE様症候群と診断した.
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