抄録
糖尿病における補体変動の意義を知るために糖尿病患者72名(細小血管症を合併しない糖尿病[F群] 35名,糖尿病性網膜症[R群] 14名,糖尿病性腎症[N群] 12名,糖尿病性腎症透析患者[DHD群] 11名),健常者[H群] 25名の補体フラグメントC4d, iC3b, Bbを測定した.その結果,次のごとき結果が得られた. F群およびR群ではC4d, iC3b, Bb共にH群に比し有意に高値を示し, classical pathway, altemative pathway両経路の活性亢進が示唆されたが,両群間に有意差はみられなかった. N群では, F, R群に比しC4d, iC3bの有意な高値がみられclassical pathwayを介した補体活性の亢進が腎症の成り立ちになんらかの関与をしている可能性が示唆された. DHD群でも,両経路の活性亢進が示唆されたが, C4d, iC3bはN群に比し低かった.