日本臨床免疫学会会誌
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シェーグレン症候群における肝病変
臨床病理学的検討
土肥 和紘梅村 康義藤本 隆石川 兵衞辻井 正杉岡 五郎中沼 安二
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1992 年 15 巻 4 号 p. 370-377

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抄録

目的: Sjögren症候群(SS)に合併する肝病変としては慢性持続性肝炎(CPH),慢性活動性肝炎(CAH)や原発面胆汁性肝硬変(PBC)などが知られている.しかしながらSSに合併する肝病変について少数の報告をみるにすぎず,現在でも全容について明ちかにされているとはいえないようである.そこで,われわれはSSに合併する肝病変の実態を明確にする目的で自験例について検討した.
方法:厚生省特定疾患「シェーグレン病」調査研究班の診断基準を満足するSS確実例162例中,臨床検査でトランスアミナーゼ上昇などの肝機能障害を示すが,輸血歴,アルコール多飲歴がなく, B型肝炎ウイルスマーカー陰性の15例を対象に唾液腺生検や肝生検などを実施した.
結果: SS 162例中,肝機能障害が認められた15例のうち14例に肝生検を施行したが, CPHが4例, CAHが5例, PBCが5例に認められた.厚生省特定疾患「シェーグレン病」調査研究班診断基準の唾液腺組織に特徴的な所見を示す症例の頻度は,肝機能障害を伴わないSSでは103例中50例(49%)であったのに対し,肝機能障害を伴うSSでは13例中11例(85%)であった.抗C型肝炎ウイルス関連抗体は, CPHおよびCAHの6例中5例に陽性であったのに対し, PBCの3例全例が陰性であった.
考察:厚生省特定疾患「シェーグレン病」調査研究班診断基準の唾液腺組織に特徴的な所見を示す症例の頻度は,肝病変非合併例に比して合併例で有意に高かったといえる. SSに合併する慢性肝炎はC型肝炎ウイルス感染によるものが多く, SSに特異的な肝合併症はPBCだけといえるかもしれない.

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