日本臨床免疫学会会誌
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側頭動脈炎に慢性硬膜下血腫を合併した1症例
戸村 好太郎八田 善弘早川 佳夫竹内 東太郎松崎 正一澤田 滋正冨永 幹洋
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1992 年 15 巻 5 号 p. 487-491

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抄録

高血圧,視神経萎縮にて外来加療中の75歳男性が,発熱,頭痛を主訴に来院.血沈, CRP強陽性,白血球増多を呈し,感染症を疑い,抗生物質投与が開始されたが,症状,検査所見ともに改善しなかった.頭部エックス線単純CT上軽度の慢性硬膜下血腫を認めたが,明らかな感染巣は見い出せなかった.髄液所見は正常だが軽度髄液圧上昇を認めた為ウイルス性髄膜炎を疑い,ステロイドを投与した.この結果症状検査所見ともに改善したためステロイドを減量しながら中止した.その後再度同様の症状の他,四肢のしびれ感,浮腫が出現した.白血球増多,血沈亢進, CRP強陽性, RAHA陽性などの所見も再出現した.ステロイド再投与で再度改善がみられた.精査上,全身性エリテマトーデスや慢性関節リウマチなどの膠原病は否定的で,四肢および上腸間動脈腎動脈造影検査も正常だったが浅側頭動脈生検で側頭動脈炎(Temporal Arteritis;以下TA)に一致する所見を認め, TAに慢性硬膜下血腫を合併したものと診断した. TAでも急性の失明や脳梗塞などの報告はあるが,慢性硬膜下血腫の合併は文献的にもみあたらない.この慢性硬膜下血腫合併側頭動脈炎の1例について報告した.

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