10人の胆石症患者において術前術後,経時的に末梢血中のTNF-α, IL-1α, IL-1β, IL-6およびGM-CSF値を測定し,その変化から手術侵襲による各種サイトカインの変動,およびサイトカイン間の相互作用を検討した.
まず,患者群と健常人群を比較した結果,胆石症患者では健常人に比較して経過中これらのサイトカインが全例高値を示した.また,術後経時的に各サイトカイン値を測定すると, TNF-αは術後15時間目と2日目, IL-1αは18時間目と3日目, IL-1βは21時間目と5日目, IL-6は術後24時間目と7日目に2相性のピークを認めた.一方, GM-CSFは術後3日目にピークが認められただけであった.
以上より,胆石症患者では手術侵襲によりまずTNF-αが,そしてIL-1α, IL-1β, IL-6と順次誘導されること,およびこれらサイトカインは術後24時間以内およびそれ以降で2相性に誘導されることが判明した.
一方, CRPおよび白血球数(WBC)の変化を測定したところ, CRPは術後2日目に, WBCは術後1日目に有意な上昇が認められた.また,これらの変化とサイトカインとの関係を検討したところ, CRPおよびWBCは1相目のサイトカイン変化の後に上昇し,これらのピーク後さらに2相目のサイトカインが誘導されることが証明された.
以上の結果から,手術による生体の障害,およびそれからの回復と各種サイトカインは密接に関係していることが示唆された.
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