抄録
症例は25歳男性. 1991年3月にSLEと診断され,プレドニソロン30mg/日投与開始した.その後15mg/日まで漸減し経過観察していた. 1993年4月プレドニソロン自己中止したところ, 6月初旬より頭痛が出現, 6月11日外来受診時血圧170/110mmHgで,顔面蝶形紅斑も認めたため当科に入院した.心電図上肺性P波・右軸偏位,胸部X線上左第2弓の突出がみられ,心臓カテーテル検査にて肺動脈圧の上昇を認め(33mmHg),肺高血圧と診断した.また,血漿レニン活性の上昇(9.5ng/ml/hr)とレノグラムでのピーク時間の遅延より,腎血管性高血圧と診断した.本症例では,入院時抗CL抗体および抗CL/β2 Glycoprotein I抗体が陽性であったが,プレドニソロンの増量により消失した.したがって,本症例における肺高血圧・腎血管性高血圧の発症に抗リン脂質抗体の関与した可能性が示唆された.