日本臨床免疫学会会誌
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培養ヒト末梢血単球のサイトカインならびにlipopolysaccharide (LPS)刺激によるfibronectin産生
北村 登西成田 進滝沢 隆富田 康之葉山 隆堀江 孝至
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1995 年 18 巻 2 号 p. 178-187

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抄録

Fibronectin (以下FN)は,血漿中,細胞表面,細胞外マトリックスなどに存在する糖蛋白で,細胞の接着のみならず炎症反応,免疫反応に重要な役割を担っていることが明らかにされてきている.今回われわれは,培養ヒト末梢血単球を, IL-1α, IL-6, TNFαなどのサイトカインやlipopolysaccharide (LSP)で刺激した後の活性化の状態を, FNの産生を指標として測定した.いずれのサイトカイン, LPS刺激でも,単球は濃度依存性にFNの産生を増加させた.経時的変化でみると,いずれの刺激によっても,培養後4時間でFN産生の増加を認めた.また単独ではほとんどFN産生を示さないsub-optimal doseのサイトカインでも, 2種を組み合わせることによって(IL-1α+IL-6, IL-1α+TNFα, IL6+TNFαなど),各サイトカイン単独で高濃度刺激の場合と同等のFN産生を認めた.これらのサイトカイン, LPSによるFNの産生は, FNに特異的なcDNAを用いたNorthern blotting法でも検討され,培養後4時間のmRNAの発現は無刺激に比較して有意に増強していた.以上の結果は,実際の生体内で,単球活性化を始まりとする免疫・炎症反応が,必ずしも単独で大量のサイトカインを必要とせず,きわめて微量のサイトカインどうしの相乗的(synergistic)な効果によって十分に進行しうることを示している.さらに,単球より産生されたFN自身もまた,免疫・炎症反応の進行に関与しているものと考えられた.

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