日本臨床免疫学会会誌
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In Situ PCR: その応用と問題点
向井 正也Charles R. Steinman
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1996 年 19 巻 1 号 p. 15-26

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抄録

In situ polymerase chain reaction (ISPCR)の方法,応用,問題点について検討した. In situ PCRは目的とするDNAを組織, cytospin, またはcell suspensionのなかで増幅させる方法であり,感度を上げるだけでなく,その局在がわかるという利点がある.しかし,非特異的反応という問題点がある. Direct ISPCRは,目的とする核酸に直接標識した核酸を取り込ませていくものであるが, DNAおよびTaq DNA polymerase依存性でprimer非依存性の非特異的反応が認められる. Direct ISPCRでは, no primerまたはirrelevant primerによるコントロールが必要である. Indirect ISPCRは, PCRとin situ hybridization (ISH)を組み合わせたものであるが, Taq DNA polymeraseをPCRのステップで除くコントロールとISHの条件をきちんと設定することが重要である. Reverse ISPCRは, reverse transcriptaseを用いて, mRNAからcDNAをin situで作製しPCRを行うものであるが, DNase処理のコントロールとirrelevant primerのコントロールが必要である. In situ PCRの結果を記載するときには,非特異的反応の可能性を除くために,コントロールの結果が記載されるべきである.
Direct ISPCRで認められるこの非特異的反応の原因は,まだはっきりしていない.われわれは,これを解決するためにdideoxy dNTPs, DNA ligase, nuclease S 1, T 7 exonucleaseによる前処理やPCRにおいてTaq DNA polymerase Stoffel fragmentを用いる処理を単独または組み合わせて行ったが,解決できなかった.したがって,非特異性の機序として,目的とする核酸にnickがあるためという可能性や組織中にあるDNAの小断片がprimerのように働いて生じるという可能性以外の原因を考える必要がある.
In situ PCRは非常に感度のよい方法なので,多くのことに応用が可能であると思われる.特に臨床材料から病原微生物を検出することはコントロールもおきやすく,よい適応と思われる.しかしながら,その実施に当たっては,非特異性の除去のために十分なコントロールがおかれるべきである.

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