日本臨床免疫学会会誌
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19 巻, 1 号
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  • 菅井 進
    1996 年19 巻1 号 p. 1-14
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    全身性エリテマトーデス,慢性関節リウマチなどの全身性自己免疫疾患やSjögren症候群(SS)などの臓器特異的自己免疫疾患に悪性リンパ腫,特にB細胞性リンパ腫が多いことが注目されている. SSにおいてわれわれは種々の方法を組み合わせて検討したところ, 306例の患者の中に61例(20.0%)に単クローン性の非悪性リンパ増殖性病変(LPD)を認め,悪性リンパ腫13例,マクログロブリン血症2例を加えると76例(24.8%)にLPDがみられた.悪性化へ進展する要因として,リウマトイド因子遺伝子Vgなどの活性化やbcl-2プロト癌遺伝子の病変局所での活性化などが重要と考えられる.自己免疫疾患におけるLPDの好発は持続する病変局所での自己免疫反応によるリンパ球分裂がプロト癌遺伝子,癌抑制遺伝子などの種々の遺伝子の異常を引き起こし,これらが積み重なって多段階的に腫瘍化するものと考えられる.
  • 向井 正也, Charles R. Steinman
    1996 年19 巻1 号 p. 15-26
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    In situ polymerase chain reaction (ISPCR)の方法,応用,問題点について検討した. In situ PCRは目的とするDNAを組織, cytospin, またはcell suspensionのなかで増幅させる方法であり,感度を上げるだけでなく,その局在がわかるという利点がある.しかし,非特異的反応という問題点がある. Direct ISPCRは,目的とする核酸に直接標識した核酸を取り込ませていくものであるが, DNAおよびTaq DNA polymerase依存性でprimer非依存性の非特異的反応が認められる. Direct ISPCRでは, no primerまたはirrelevant primerによるコントロールが必要である. Indirect ISPCRは, PCRとin situ hybridization (ISH)を組み合わせたものであるが, Taq DNA polymeraseをPCRのステップで除くコントロールとISHの条件をきちんと設定することが重要である. Reverse ISPCRは, reverse transcriptaseを用いて, mRNAからcDNAをin situで作製しPCRを行うものであるが, DNase処理のコントロールとirrelevant primerのコントロールが必要である. In situ PCRの結果を記載するときには,非特異的反応の可能性を除くために,コントロールの結果が記載されるべきである.
    Direct ISPCRで認められるこの非特異的反応の原因は,まだはっきりしていない.われわれは,これを解決するためにdideoxy dNTPs, DNA ligase, nuclease S 1, T 7 exonucleaseによる前処理やPCRにおいてTaq DNA polymerase Stoffel fragmentを用いる処理を単独または組み合わせて行ったが,解決できなかった.したがって,非特異性の機序として,目的とする核酸にnickがあるためという可能性や組織中にあるDNAの小断片がprimerのように働いて生じるという可能性以外の原因を考える必要がある.
    In situ PCRは非常に感度のよい方法なので,多くのことに応用が可能であると思われる.特に臨床材料から病原微生物を検出することはコントロールもおきやすく,よい適応と思われる.しかしながら,その実施に当たっては,非特異性の除去のために十分なコントロールがおかれるべきである.
  • 松田 重三
    1996 年19 巻1 号 p. 27-38
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
  • 川内 喜代隆
    1996 年19 巻1 号 p. 39-52
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    抗原によるB細胞抗原受容体(BCR)刺激はB細胞の増殖および分化開始に必須のシグナルである.抗IgM抗体によるBCRの架橋は非受容体型チロシンリン酸化酵素(PTK)を含む種々の細胞内蛋白のチロシンリン酸化を誘導する.今回,われわれはTNP特異的IgMを発現するTA 3 7.9 (7.9)B細胞をTNP抗原あるいは抗IgM抗体で刺激することにより, 1分以内に複数の基質のチロシンリン酸化のみならず癌遺伝子産物p 21ras(ras)が活性化されることを観察した.このras活性化はPTK阻害剤であるGenisteinおよびHerbimycin Aによりほぼ完全に阻害され,さらにチロシン脱リン酸化酵素(PTP)であるCD 45を強く阻害するPhenylarsine oxide (PAO)処理によってもほぼ完全に阻害された.これらのことは, BCRを介するras活性化がPTKおよびCD 45を含むPTPにより調節されていることを示唆している.また, TNP抗原刺激によってlynのチロシンリン酸化が,抗IgM抗体の刺激によりFyn, Blkのチロシンリン酸化が誘導されることから,これらのPTKは基質蛋白のチロシンリン酸化やrasの活性化に関与すると考えられた.さらに, rasの調節蛋白であるrasGAPが抗原刺激後迅速にチロシンリン酸化を受け,同時にGTP加水分解活性が阻害されたことからPTKがrasGAP蛋白を介してras制御に関与していると推定された.
  • 中西 貞信, 竹村 周平, 瀬戸 信之, 柳田 国雄, 土井 たかし, 一尾 直子, 中原 梨佐, 笠松 美宏, 岡本 雅之, 小野寺 秀記 ...
    1996 年19 巻1 号 p. 53-59
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    CD 46 (Membrane cofactor protein, MCP)は,ヒト細胞膜上にみられる糖蛋白で,補体制御にかかわる血漿蛋白の一つであるI因子が,自己細胞膜上に結合したC 3 b/C 4 bの切断不活化を行う際のコファクターとして作用する.これまでに成熟赤血球以外のすべてのヒト血液細胞,血液(補体)にさらされる内皮,外皮,線維芽細胞などにその存在が認められており,近年,諸臓器についてもその分布が明らかにされつつある.分子量は約35~76kDaと組織の違いにより多様性が認められている.われわれは手術により得られた大腸の正常粘膜上のMCPの発現に対する検討を行った. MCPは免疫組織化学的検討で大腸粘膜上皮細胞上に認められ,さらにWestern blot法において50~65 kDaの幅広い1本のバンドとして存在した.ごくまれに43~46 kDaの淡いバンドを示す例も存在したが,これらはリンパ球などの混入によると考えられた.
  • 金子 博行, 戸叶 嘉明, 橋本 博史, 廣瀬 俊一
    1996 年19 巻1 号 p. 60-68
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    SLEの細胞性免疫の異常については,多クローン性B細胞活性化を代表とするB細胞の異常, IL-6を代表とするサイトカインの異常4, 5)が報告されてきた.またT細胞の異常に関しては,末梢血活性化T細胞が出現し,それが疾患活動性と関連することが報告されてきた. しかしながら, SLEの代表的な免疫異常の一つである多クローン性B細胞活性化および自己抗体産生とT細胞の活性化との関連は明らかではなかった.一方,近年に至って免疫担当細胞の細胞間情報伝達における接着因子の関与が報告され,特にT細胞, B細胞の相互作用においてもLFA-1, ICAM-1などの接着因子の関与が指摘されている.
    ARAの診断基準をみたす疾患活動性の高いSLE患者(31.7±9.9,13~54歳, m:f=2:52) 54例および健常者(27.6±4.1, 20~35歳, m:f=14:18) 32例を対象として末梢血T細胞におけるLFA-1の発現,および末梢血B細胞におけるICAM-1の発現をモノクローナル抗体を用いた二重染色後フローサイトメトリーにて解析を加えた.その結果,疾患活動性の高いSLE患者では健常者に比べて, LFA-1α, β, ICAM-1およびHLA-DPのすべてにおいて有意に高値を示し,またLFA-1陽性T細胞の比率とHLA-DP陽性T細胞の比率, LFA-1陽性T細胞の比率とICAM-1陽性B細胞の比率およびICAM-1陽性B細胞の比率と血清IgG値の間には有意な相関関係を認めた.
    以上の結果より, SLE患者の活性化T細胞のB細胞への相互作用にLFA-1, ICAM-1分子が何らかの関与をしていることが示唆された.
  • 目片 英治, 寺田 信國, 小玉 正智
    1996 年19 巻1 号 p. 69-79
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    消化器癌の免疫療法を念頭においた場合,腫瘍の免疫原性の問題は避けて通ることはできない.そこで非免疫原性腫瘍1767-3を親株とした実験毛デルで遺伝子治療の可能性について検討した.親株にTNFα遺伝子を導入して得た株を1767 TR 2と名づけた.親株をmutagen (N-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine)で処理して樹立した株A 7にさらにTNFα遺伝子を導入して得た株A 7 TR 3を作成した.癌のワクチン効果を比較するため1767 TR 2, A 7, A 7 TR 3それぞれをマウスの背部皮下に移植(3回/1月間)し免疫した後,親株を移植しその拒絶効果を検討した. A 7 TR 3>A 7>1767 TR 2の順に拒絶効果が強かった.それぞれの株と親株を混合して皮下移植したところ,やはり同じ順序で親株の生着抑制効果が認められた.次にCTL誘導効果をinvitroにて検討した. A 7, A 7 TR 3それぞれをマウスの背部皮下に移植(3回/1月間)したマウスの脾細胞を用いて, A 7, A 7 TR 3と4日間混合培養(MLTC)の後, 51Cr放出細胞障害試験を行った. A 7 TR 3免疫群はA 7免疫群に比較して有意に高い細胞障害活性が得られ,しかもcold target inhibition testでその障害活性は親株に対して特異的であることを確認した.消化器癌のように免疫原性の低い腫瘍に対して, TNFα遺伝子治療を行う場合, mutagen処理などによって免疫原性の増強を同時にはかることが効果発現に極めて有効であると考えられた.
  • 瀬戸 信之, 竹村 周平, 中西 貞信, 土井 たかし, 一尾 直子, 中原 梨佐, 笠松 美宏, 柳田 国雄, 岡本 雅之, 小野寺 秀記 ...
    1996 年19 巻1 号 p. 81-86
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    CD 46 (Membrane cofactor protein)は同一個体の中でも臓器あるいは細胞により表現型が異なる膜蛋白である.その機能は補体成分I因子のコファクターとして,自己細胞膜上に結合したC3bを不活性化し補体の攻撃から自己細胞を防御することである.手術により得られた胃の非癌部組織を用い, CD 46の発現の有無ならびに性状を免疫化学的に検討した.その結果CD 46は胃粘膜上皮細胞,固有粘膜層,血管内皮に強く発現が認められた.粘膜下層,筋層の発現はごく軽微であった.また胃粘膜のCD 46は,リンパ球などに認められる表現型と異なり, 60-69 kDの幅広い蛋白として存在した.
  • 若杉 和倫, 鈴木 秀子, 鈴木 満
    1996 年19 巻1 号 p. 87-93
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    遊離型免疫グロブリンL鎖free light chain (FLc)はB細胞腫瘍,腎機能障害,慢性関節リウマチ,肺結核, sarcoidosis, AL amyloidosisなどの患者の血液または尿に過剰に検出されている.これまで免疫グロブリンL鎖はアミロイド前駆物質の一つとして注目されてきたが,最近ではlight chain deposition diseaseの独立した疾患としての概念も提唱されている.適切なFLc定量法が望まれるこのような状況において,今回われわれは市販の抗ヒトFLcポリクロナール抗体を用いてTIA nephelometryによるFLc定量測定を検討した.希釈直線性,同時および日差再現性,添加回収試験でほぼ満足すべき結果を得,さらに健康成人60名の血清FLc濃度を測定してFLc κ: 0.71mg/dl, FLc λ: 0.50mg/dl(平均値)を得た.この測定法はFLcの血中動態を追跡するのに有用である.
  • 井上 文彦, 大野 辰治, 古川 裕夫
    1996 年19 巻1 号 p. 94-99
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    慢性関節リウマチ(RA)の発症から約30年後に多発性骨髄腫を合併したまれな1例を報告した.
    症例は79歳女性. 1965年頃からRAの診断で多施設で加療されていた. 1992年,腰痛出現, 1993年11月当科受診し初めてM蛋白血症を指摘された.血清IgA 2,380mg/dl, 骨髄中異型形質細胞66.0%,免疫電気泳動でlgA(λ)型M-bowを認めた. RF 154IU/mlと増加し,骨X線で頭蓋骨にpunched out lesionと両手指関節を中心に,関節の破壊,変形を認めた. RAの経過中に発症した多発性骨髄腫と診断し, melphalan投与で症状は改善したがM蛋白の減少はわずかであった.約15カ月後にMP療法(melphalan+prednisolone)を施行し,血清IgA 415mg/dl, 骨髄中異型形質細胞4.0%と著減したが,直後にRAの再燃がみられた.
    RAに多発性骨髄腫が合併する原因は不明だが,免疫学的機序が想定されており,今後症例を集積し検討することが望まれる.
  • 牛山 理, 横山 真為子, 鈴木 憲明, 大田 明英, 加藤 博之, 長沢 浩平, 深堀 哲弘, 工藤 祥
    1996 年19 巻1 号 p. 100-106
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    CT, MRIにて早期診断しえた大動脈炎症候群の1例を報告する.患者は24歳,女性で数カ月に及ぶ発熱を主訴に来院した.感染症は否定的であり,脈拍の左右差も認められなかった. Gaシンチグラムにて上腹部正中に異常集積がみられたことからCTスキャンを施行したところ大動脈の壁肥厚があり,さらにMRIにて同様の所見が前額断でも確認できた.局所麻酔薬過敏症のため大動脈造影は実施できなかったが, CT・MRIの所見から高安動脈炎と診断しプレドニゾロン30mg/日の内服にて発熱・炎症所見とも改善した.さらに,治療開始約40日後のMRIでは大動脈壁肥厚の改善が認められた.特にMRIは放射線被曝もなく,前額断での大動脈壁の所見も得られることから,比較的早期の大動脈炎症候群の診断,経過観察に有用と考えられた.
  • 今井 浩三
    1996 年19 巻1 号 p. 109-113
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
  • 島岡 要, 廣井 隆親, 清野 宏
    1996 年19 巻1 号 p. 114-118
    発行日: 1996/02/29
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
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