抄録
症例は77歳女性.平成6年2月より外鼻腫脹,鼻閉が出現, 3月に当院耳鼻咽喉科を受診した.左鼻咽頭腔に腫瘤が認められ腫瘤切除術が施行された. non-Hodgkin's lymphoma (LSG: difffuse, medium sized)と診断され,当科に転科した. CHOP 2コース,局所の放射線照射を行い,残存腫瘤の縮小傾向が認められた. 7月より著明な心嚢液貯留が認められ,心嚢液中に顆粒リンパ球様の腫瘍細胞が認められた.細胞表面マーカーはCD 2, CD 7, CD 56, HLA-DR陽性でCD 3陰性, NK活性高値で, TCR遺伝子再構成は認められなかった. ProMACEおよび抗癌剤の心嚢内注入を施行したが効果なく心不全が進行し死亡した.心嚢液中のリンパ腫細胞でEBVのterminal repeatを用いたサザンブロット法により腫瘍細胞の単クローン性が確認され,本例の腫瘍化にEBVの関与が考えられた.