抄録
症例は56歳女性. 48歳時,発熱,多関節炎,口腔内潰瘍,白血球減少,抗DNA抗体陽性で非腎症の全身性エリテマトーデス(SLE)と診断された. 51歳時,心外膜炎と胸膜炎を呈したが,副腎皮質ステロイド薬で軽快. 56歳時,同薬の漸減中に労作時呼吸困難が出現.胸部X線で肺内病変を伴わない横隔膜の挙上,拘束性呼吸機能障害(%VC 38%)と低酸素血症(PaO2 65 torr)を認めた.胸部CTでも肺のびまん性間質性変化はなかった.同時に,白血球減少,赤沈亢進,抗DNA抗体価の上昇を認め, SLEの疾患活動性の上昇と伴に呼吸器病変が増悪したと考え,副腎皮質ステロイド薬を増量した.呼吸困難は速やかに消失し,これらの検査値も改善した.以上より,本例の呼吸器障害は「縮小肺(shrinking Iung syndrome)」と診断したが,急性経過をとり, SLEの疾患活動性の上昇との関連が示唆された稀な症例と考えられた.