日本臨床免疫学会会誌
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19 巻, 3 号
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  • 溝口 昌子
    1996 年19 巻3 号 p. 169-178
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
  • 横山 徹, 黒坂 大太郎, 橋本 信也
    1996 年19 巻3 号 p. 179-184
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.悪性関節リウマチの治療のため入院した.入院第10病日目,呼吸困難を訴え,その後大量の下血が認められた.その原因として,血管炎および急性心不全の増悪が考えられ,各種治療を行ったが,効果なく,第13病日に死亡した.剖検では,結腸から直腸に出血性梗塞が観察され,腸間膜動脈内膜の著明な肥厚が認められた.しかし,壊死性病変や炎症細胞の浸潤は認められなかった.このことから本症例の急激な大量の下血の原因は血管炎そのものの増悪というよりは閉塞性血管病変に循環不全が加わり,腸梗塞を生じた結果によるものと考えられた.
  • 大野 岩男, 柴崎 敏昭, 五味 秀穂, 阿部 精二郎, 酒井 紀
    1996 年19 巻3 号 p. 185-192
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    ステロイド・パルス療法(以下パルスと略す)を行ったループス腎炎患者の腎機能長期予後を明らかにするために,パルス後長期間(平均10.3年)観察し得たループス腎炎患者14例(全例女性,パルス時年齢平均28.1歳,腎組織: WHO III 3例, IV 10例, V 1例)を対象に腎機能予後および腎機能予後に対する危険因子の検討を行った.その結果14例中4例がパルス後平均5.7年で腎機能不全に陥ったが,他の10例ではパルス後平均11.5年観察したが腎機能は保持されていた.腎機能悪化とパルス前の糸球体硬化指数は有意な(P=0.033)相関を認めたが,持続する免疫学的活動性,低蛋白血症や高血圧は腎機能悪化との相関はなかった.従って糸球体硬化指数の高さは腎機能予後における危険因子と考えられ,ループス腎炎に対するパルスは糸球体硬化の程度が軽い症例に適応があると考えられた.
  • 緋田 めぐみ, 牛山 理, 鈴木 憲明, 大田 明英, 長沢 浩平, 山口 雅也
    1996 年19 巻3 号 p. 193-200
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    強皮症患者15名・混合性結合組織病患者3名・レイノー病患者1名に対し, beraprost sodium (BPS) 60μg/日を12週間投与し,レイノー現象に対する効果判定を,自覚症状・皮膚温・末梢血中tissue plasminogen activator (t-PA), von Willebrand factor (vWF), endothelin等の測定にて行った.投与後,レイノー現象の発生頻度および持続時間は有意に改善していた.また,皮膚温も有意な上昇を示した.分子レベルでの効果判定項目としての, t-PA, vWF, endothelinの測定値の解析では, t-PAの血漿レベルの有意な低下がみられた.また,爪床毛細血管ループの数の増加がみられた症例も1例あり, BPSはレイノー現象等における末梢循環の改善に有用であることが示唆された.
  • 樺山 浩彦
    1996 年19 巻3 号 p. 201-209
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    分子遺伝学の進歩は, polymerase chain reaction (PCR)法により増幅した塩基からHLA-class II領域のタイピングを可能にした.しかし,従来のPCR法では,時間的に多くの検体の処理は困難であった.そのため,多くの検体の処理のための簡便な方法を開発した. 1)濾紙に吸着した有核細胞からゲノムDNAを抽出, 2)新しくデザインしたHLA-DRBプライマー: DRB5'-1 (ACCGGTCGTTCITGTCCCCICAGCA)およびDRB3'-1 (CTCGCCICTGCACIGTIAAGC)を使用したPCR法(熱変性94°C, 2分間,アニーリング, 1分間,伸長72°C, 2分間を1サイクルとし30サイクル)によって増幅したHLA-DRB領域をナイロン膜にブロットした後, 32p標識合成sequence specific oligonuclotide (SSO)プローブでラベルでタイピングを行った.新しいプライマーを用いることによって, DRB 1鎖, B 3鎖, B 4鎖およびB 5鎖の塩基配列におけるタイピングも明らかとなった.このタイピング法は多数の検体のHLAタイピングのために有効な方法と考えられた.
  • 瀬戸 信之, 竹村 周平, 中西 貞信, 土井 たかし, 一尾 直子, 中原 梨佐, 笠松 美宏, 柳田 国雄, 岡本 雅之, 小野寺 秀記 ...
    1996 年19 巻3 号 p. 210-216
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    CD 46 (Membrane cofactor protein)は同一個体の中でも臓器あるいは細胞により,その分布および表現型が異なる細胞膜の補体制御糖蛋白の一種である.先に我々は,胃におけるCD 46が胃粘膜上皮,固有粘膜層および血管内皮に強く表現していること,また正常胃粘膜のCD 46はリンパ球などに認められる表現型と異なり60~69kDの幅広い蛋白として存在していることを報告した. 本論文では癌化によるCD 46の発現および性状の変化につき検討した.その結果,非癌部胃粘膜のCD 46と比べ胃癌上皮細胞におけるCD 46の発現は増加している場合が多くみられ,さらに分子量が変化する場合があることが判明した.
  • 北村 祐子, 岡野 裕
    1996 年19 巻3 号 p. 217-222
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    症例は56歳女性. 48歳時,発熱,多関節炎,口腔内潰瘍,白血球減少,抗DNA抗体陽性で非腎症の全身性エリテマトーデス(SLE)と診断された. 51歳時,心外膜炎と胸膜炎を呈したが,副腎皮質ステロイド薬で軽快. 56歳時,同薬の漸減中に労作時呼吸困難が出現.胸部X線で肺内病変を伴わない横隔膜の挙上,拘束性呼吸機能障害(%VC 38%)と低酸素血症(PaO2 65 torr)を認めた.胸部CTでも肺のびまん性間質性変化はなかった.同時に,白血球減少,赤沈亢進,抗DNA抗体価の上昇を認め, SLEの疾患活動性の上昇と伴に呼吸器病変が増悪したと考え,副腎皮質ステロイド薬を増量した.呼吸困難は速やかに消失し,これらの検査値も改善した.以上より,本例の呼吸器障害は「縮小肺(shrinking Iung syndrome)」と診断したが,急性経過をとり, SLEの疾患活動性の上昇との関連が示唆された稀な症例と考えられた.
  • 川本 篤彦, 椎木 英夫, 花谷 正和, 橋本 俊雄, 土肥 和紘
    1996 年19 巻3 号 p. 223-231
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,女性. 1988年8月に紫斑を主訴に入院した.白血球12,400/μl, 血小板1,000/μlであったが,骨髄巨核球は正常であった.また,抗核抗体と抗DNA抗体も陽性であった.第22病日に白血球が49,300/μlに増加したが,無治療で血液所見は軽快した.退院後,血小板減少が寛解と増悪を繰り返し,骨髄巨核球は低形成を示すようになった.また,多発性関節痛,口腔潰瘍,発熱およびLE細胞陽性が認められるようになった. 1990年1月に胸膜炎と間質性肺炎で入院した. γ-グロブリン大量療法,副腎皮質ステロイドパルス療法が施行されたが,呼吸不全のために死亡した.剖検では,間質性肺炎,胸膜炎,心外膜炎,腎の壊死性血管炎および骨髄巨核球の低形成が認められた.
    本例は,血小板減少と白血球増加で発症し,経過中に骨髄巨核球の低形成が認められたSLEの1剖検例であり,稀な症例と考えられる.
  • 山根 一秀, 飯島 達生, 中原 朗, 竹村 博之, 湯原 孝典, 赤間 高雄, 鈴木 博史, 柏木 平八郎
    1996 年19 巻3 号 p. 232-237
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    全身性エリテマトーデス(SLE)に悪性腫瘍が伴うことはよく知られている.最も多いのは非Hodgkinリンパ腫であるが, Hodgkin病,白血病,多発性骨髄腫等の血液悪性腫瘍も報告されている.しかし, SLEにおける固形腫瘍の合併はまれであり,さらにMedlineによる文献検索でもSLE患者における重複ガンの報告はみられない.われわれは子宮および胃の重複腺ガンを伴ったSLEの症例を報告する.
    症例は45歳の女性で,主訴は両側の手・肘関節の痛みと腫脹.
    主な血液検査所見は次の通りである.
    Hb 9.1g/dl, WBC 2, 800/μl,リンパ球数700/μl, Plt 137,000/μl, BUN 16.1mg/dl, Creatinine 0.6mg/dl, Creatinin clearance 115ml/min, ESR 41mm/1h, CRP 0.1mg/dl, ANA 2, 560倍陽性(peripheral pattern),抗DNA抗体90IU/ml,抗SS-A抗体16倍陽性, LE細胞(-),リウマトイド因子(-),抗Sm抗体(-),抗RNP抗体(-),抗SS-B抗体(-), C3 17mg/dl, C4 5mg/dl, CH 50 12U.
    検尿では,尿蛋白2.2gm/日,潜血(+),沈渣で顆粒円柱,硝子円柱を認めた.
    胸部エックス線では両側性胸水貯留を認めた.腎生検所見はfocal proliferative lupus nephritis (WHO II a)を示した.
    アメリカリウマチ学会のSLE分類基準で関節炎,漿膜炎,腎病変,抗dsDNA抗体,および抗核抗体の5項目を満たしSLEと診断され,入院6日目にプレドニゾロン(PSL) 60mg/日を開始された.患者は入院の数カ月前から不正性器出血に気づいていたため,婦人科診察を受け子宮ガンと診断された.メチルプレドニゾロンによるパルス療法の後, PLSを30mg/日に減量され,準広汎子宮全摘術,骨盤内リンパ節郭清術,両側付属器切除術を施行された.病理診断は,子宮体の腺ガン(子宮内膜型)であった.患者は退院したが, 10カ月後に心窩部不快感を訴え再入院した.胃内視鏡検査で胃の腺ガン(II a)と診断され,内視鏡的粘膜切除術を受けた.
  • 土屋 佳奈子, 鈴木 憲明, 牛山 理, 大田 明英, 長沢 浩平, 米満 伸久
    1996 年19 巻3 号 p. 238-243
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    古典的項目に加えて多彩な合併症を呈したPOEMS症候群の1例を経験した.症例は65歳の男性. 1984年,痛風発作,四肢のレイノー症状,しびれが出現し,血清蛋白分画異常の精査にて良性M蛋白血症と診断された.その後10年間に狭心症,耐糖能異常, S状結腸癌,急性心筋梗塞,高カリウム血症を発症した. 1994年,強皮症様の皮膚変化,多発性神経炎が出現し,精査の結果POEMS症候群と診断され,新たに膜性増殖性糸球体腎炎と脳腫瘍の合併が確認された.これら多彩な合併症は本症候群の成因と関係している可能性があり興味深い.
  • 河島 尚志, 柏木 保代, 木ノ上 啓子, 武隅 孝治, 星加 明徳, 清水 亨, 新井 盛夫
    1996 年19 巻3 号 p. 244-250
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    症例は乳児期より出血傾向を認め, 10歳の時に血小板減少性紫斑病で入院し,精査の結果抗リン脂質抗体陽性SLEと診断しえた.患児の血小板数は6.0×103lと著減し, APTTの延長を示していた.ステロイドにて治療開始後血小板数は正常化した.梅毒血清反応の生物学的偽陽性反応,ループスアンチコアグラントおよび抗カルジオリピンIgG, IgM抗体は陽性であり抗リン脂質抗体症候群の診断基準を満たした.さらに抗核抗体陽性,蛋白尿,血尿を示すため,腎生検を施行した.腎組織像はループス腎炎(瀰漫性膜性糸球体腎炎)を示し, SLEと診断された.現在までステロイドによる治療をおこなっているが,検査上線溶系の亢進は認めず,血栓症症状は3年間の経過観察中認めていない.本邦における抗リン脂質抗体症候群に関する小児例の報告は少なく,まれな症例と考えられたため報告する.
  • 井波 知子, 中山 智子, 富田 康之, 橋本 修, 西成田 進, 堀江 孝至
    1996 年19 巻3 号 p. 251-258
    発行日: 1996/06/30
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    症例は52歳の男性,発熱,口腔内カンジダ症の精査目的で入院となった.昭和62年から平成2年にかけてタイにて異性間性的接触があった.入院時, Human Imunodeficiency Virus-1抗体陽性, CD4陽性リンパ球数9/μl, CD4/CD8比0.01, 血液培養からCryptococcus neoformansが検出された.また,髄膜刺激症状は認められなかったが,髄液培養検査から,血液と同様にCryptococcus neoformansが検出され,後天性免疫不全症候群(AIDS)に伴うクリプトコッカス血症・髄膜炎と診断した.アンホテリシンBを10mg/日から静脈投与開始し, 30mg/日に増量したところ,投与開始3週間で解熱傾向を認めたため,合計7週間,総投与量1,220mgで終了とした.以後は経口フルコナゾール400mg/日の維持療法に切り替え,外来通院が可能となった. AIDS患者のクリプトコッカス髄膜炎・血症は予後不良の徴候であるが,本症例のように,特徴的な症状に乏しく,かつ髄液所見も軽微なことが多いので,診断・治療上留意が必要と思われる.
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