日本臨床免疫学会会誌
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癌転移に伴うα2 macroglobulin欠乏症に関する研究
狩野 有作大谷 英樹小柴 健
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1997 年 20 巻 1 号 p. 30-43

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抄録
血清α2 macroglobulin (α2M)濃度が約40mg/dl以下の著減を示す5症例が見い出され,それらは全て骨転移を伴う前立腺癌であり, DICの合併は認めなかった.
臨床経過においてα2M値は,経尿導的前立腺切除術および抗男性ホルモン療法により基準範囲内に復し,臨床像に伴って変動した.また,前立腺特異抗原(PSA)および前立腺酸性フォスファターゼ(PAP)値とほぼ逆相関の経日的変動を示した.これらより,血清α2M濃度は癌転移を伴う前立腺癌の病勢を反映し,血中α2Mの著減は癌転移の指標の1つとして有用であると考えられた.
癌転移の存在にもかかわらずα2Mが約20mg/dl以下では, CRPおよびSAAは陰性ないしは異常高値を示さず,それらの変動にα2Mが関与することが示唆された.
免疫組織学的検索では,前立腺癌組織にPSAおよびウロキナーゼ(u-PA)が多量に認められた.一方, PSAおよびu-PAなどのproteaseはα2Mとcomplexを形成した.したがって, α2M欠乏症は前立腺癌組織から血中へ多量に放出されるPSAおよびu-PAなどのproteaseとα2Mのcomplexの形成に伴う異化の亢進によると考えられた.
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