抄録
全身性エリテマトーデス(SLE)と強皮症(PSS) overlap症候群の1例を報告する.昭和45年,特発性血小板減少性紫斑病としてステロイド療法で軽快した. 48年に溶血性貧血・蝶形紅斑・多発関節炎・LE細胞現象陽性となり, SLEと診断された. 50年からレイノー現象が出現し,翌51年には急速に進行する皮膚硬化を認め,両上肢・顔面および躯幹の皮膚硬化とびまん性色素沈着,斑状の毛細血管拡張を伴った.さらに52年末より持続性蛋白尿が加わり,ネフローゼ症候群へと進展した.前腕皮膚生検でPSS硬化期の所見を認めたが同部の螢光抗体法では皮膚基底膜部に一致したIgM沈着がみられた.腎生検ではwire loop病変,基底膜部のIgG, IgMの顆粒状沈着を認めた.血清学的検査でも疾患特異的な自己抗体を多彩に検出し,臨床診断とよく一致していた.以上, SLE-PSS overlap症候群に腎障害を認め,特徴的な血清像を示した稀有な1例を報告した.