抄録
症例は58歳女性で, 1983年より失神発作,全身倦怠感を訴え,低ガンマグロブリン血症の精査のため1984年8月17日当院に入院した.入院時,赤沈亢進,連銭形成を認めたものの,総蛋白6.3g/dl,ガンマグロブリン8.2%と低下していた.眼底検査では静脈のソーセージ様変化がみられ, hyperviscosity syndromeの存在を確認した.熱性蛋白を調べると, Raynaud現象は認めなかったが,クリオゲルグロブリンが検出された.クリオゲルグロブリンは,クリオクリットで60%と大量に認められた.全血清,上清,ゲル部分で蛋白分画および免疫グロブリン量について検討したところ,上清部分ではいままでの検査結果とほぼ同様で低ガンマグロブリンを示し,全血清およびゲル部分ではγ位にmonoclonal peakが認められ, IgMは全血清で2,700 mg/dl,ゲル部分で3,360 mg/dlであった.血清蛋白検査で,クリオゲルグロブリンは単クローン性IgM, kと多クローン性IgGの混合型であることが確認された.骨髄ではプラズマ細胞5.2%,リンパ球様細胞1.6%を認めた.こうして,本例はクリオゲルグロブリンを伴った原発性マクログロブリン血症と診断された.項部不快感を頻回に訴えるようになったためプロカルバジンを投与したところ,治療後症状は消失しクリオクリットも31%にまで低下した.