日本臨床免疫学会会誌
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多彩な脳神経症状を呈し脳脊髓液に腫瘍細胞を認めた原発性マクログロブリン血症の1例
杉山 英二森岡 尚夫山下 直宏矢野 三郎
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1986 年 9 巻 6 号 p. 534-541

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抄録
症例, 64歳男性.全身性リンパ節腫脹を主訴に入院.血清IgMが3,650 mg/dlと著増,免疫電気泳動によりIgM-κ型M蛋白と同定された.リンパ節,骨髄ではリンパ球系腫瘍細胞が増殖しており,酵素抗体法により腫瘍細胞の細胞質にIgM, κ型L鎖の特異的な沈着を認め原発性マクログロブリン血症と診断した.経過中,左末梢性顔面神経麻痺,右舌咽,右迷走神経麻痺が出現.頭部CT検査では造影剤で増強する多発性高吸収域がみられ,髄液細胞診ではリンパ球系腫瘍細胞を認めたため腫瘍の髄膜,脳浸潤と診断した.再入院後,項部強直,痙攣が出現し意識障害が急激に進行し死亡した.原発性マクログロブリン血症にみられる神経症状の多くは過粘度症候群の一症状と考えられているが,本症例は腫瘍細胞の中枢神経系への直接浸潤が推定されるまれな症例である.
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