抄録
関節リウマチ (RA) の治療薬として, TNF-CIL-6 等の炎症性サイトカインおよびCD20, CD152等の細胞表面分子を標的とした生物製剤が開発され,それらの優れた治療効果が注目されている.しかし,これらの生物製剤はRAの全ての病態に奏効するわけではなく,易感染性,医療コスト,非経口投与等の課題も残されている.このようなRA治療薬の現状を踏まえると,将来的にどのような治療ターゲットが望ましいのであろうか.最近,RAにおいて抗IL-15抗体が上述の生物製剤とほぼ同程度の治療効果を示すことが判明した.RAの関節部位ではIL-15が過剰産生されており,IL-15はT細胞を活性化してIL-17の産生を誘導する.また,IL-17はマクロファージ等に作用し,TNF-CIL-6,IL-8,GM-CSF,MMP,PGE2等を誘導することが知られている.そこで,我々はRAを含めた免疫疾患の新たな病態関連分子としてIL-15およびIL-17に着目して創薬研究を進め, IL-15で活性化したT細胞からのIL-17産生を10 nMのオーダーで抑制する新規低分子化合物 Y-320を見出した.Y-320はマウスおよびサル関節炎モデルにおいて1 mg/kgの経口投与で治療効果を示すことが確認された.今回のオーバービューでは,免疫疾患の新規治療ターゲット探索の1例として,IL-17産生抑制薬Y-320の発見に至る創薬研究の過程を紹介する.