主催: 聖マリアンナ医科大学 リウマチ・膠原病・アレルギー内科
ANCA関連血管炎(AAV)は至適重症度別免疫抑制療法により寛解へ導入される症例がある一方、カリニ肺炎(PCP)、アスペルギルス(ASP)感染症死が最も多く対策の確立が急務である。今回真菌およびカリニに存在する細胞壁βグルカンに対する抗体の測定系を樹立し、AAVの免疫抑制療法下でのASP感染症、PCPにおける臨床的意義を検討した。[方法]カンジダ及びアスペルギルスの乾燥菌体より可溶化して調整した細胞壁βグルカンを抗原とした抗体(抗CSBG、ASBG抗体)をELISAにより測定した。健常人22名、AAV40例(ASP肺炎を示したAAV3例、PCPを示したAAV2例を含む)を対象とした。[成績]ASP肺炎3例、PCP2例の感染症のリスク因子として白血球減少(2000m3以下)低下、リンパ球(CD4:200 m3以下)IgG500mg/dl以下、37℃以上3日以上熱発、CRP値の上昇があった。抗CSBG抗体力価は健常人22名が5526±1685Uに比較し、AAV40例は533±432Uで、ASP感染症、PCP併発時にはβ-DグルカンおよびCRPの上昇に併行しCSBG力価が369±432U まで有意に低下した(P<0.001)。真菌症、カリニ肺炎が軽快すると抗CSBG、ASBG力価は上昇した。[結論]AAVにおける免疫抑制療法時の抗βグルカン抗体測定は、自然および獲得免疫によるβグルカンに対する宿主の免疫能、深在性アスペルギルス感染、カリニ肺炎の予知予測に極めて有用と考えられた。