主催: 聖マリアンナ医科大学 リウマチ・膠原病・アレルギー内科
症例は68才男性。2年前より寒冷時に四肢末端が紫色に変化していた。入院4日前に少量の血痰あり。初診時軽度の咳および喀痰、軽度の炎症反応と白血球の増多により気管支炎と判断し、ニューキノロン系抗生剤を投与した。炎症反応は改善したが、足趾末端に一箇所潰瘍の形成があり、加療のため入院した。内服抗生剤にて咳・痰は出なくなったが、プロスタグランジン製剤の点滴にもかかわらず手指末端にも壊疽が広がった。APTTの延長があり、ループスアンチコアグラントと抗カルジオリピン抗体が陽性だった。他の自己抗体は、陰性だった。前医での胸部CTを再読影したところ、肺胞出血が疑われた。また、頭部MRIにて2週間以内の多発性脳梗塞が確認された。肺胞出血から皮膚症状・脳梗塞の3臓器全ての発症は1週間から10日程度の間に発症したと考えられ、原発性の劇症型抗リン脂質抗体症候群と判断した。 ステロイドパルス療法およびワーファリンによる抗凝固療法を施行するも四肢の壊疽が広がり、免疫グロブリンも投与してやっと壊疽の進行が止まり、救命しえた。 上記症例を文献的考察を加えて発表する。