主催: 聖マリアンナ医科大学 リウマチ・膠原病・アレルギー内科
症例は88歳女性、2004年3月血痰を認め近医受診され、胸部CT所見上空洞を伴う多発結節影を認めた。同院にて気管支肺胞洗浄施行されるも結核、非定型好酸菌症、肺アスペルギルス、悪性疾患などの所見は認めなかった。2004年5月25日当院紹介受診され、上気道病変や腎病変を認めず、肺所見およびPR3-ANCA 29Uと陽性であることより、臨床的に肺限局型Wegener肉芽腫症と診断した。肺生検は本人拒否された。限局型でありかつ高齢発症であることよりST合剤による初期療法を選択、開始したところ、2004年10月6日の胸部CTにて空洞病変の縮小傾向を認め、2005年2月16日には空洞病変は消失した。またPR3-ANCAも14Uと改善を認めた。その後も臨床症状や画像所見などは落ち着いていたが、徐々にPR3-ANCAの上昇を認め2005年10月5日喀血や発熱出現、PR3-ANCA 53U、胸部CTにて再燃を認めた。2005年11月2日、シクロホスファミド25mg/dayの経口投与を開始し、その後再び軽快傾向を認めている。Wegener肉芽腫症に対する寛解導入療法はシクロホスファミドおよびステロイドの併用療法が最も推奨されており、ST合剤は寛解維持療法の一つと考えられているが、本症例のように高齢でかつ進行の比較的緩徐な限局型Wegener肉芽腫症では、ST合剤も選択しうると考えられた。