日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
ISSN-L : 1880-3296
第35回日本臨床免疫学会総会抄録集
セッションID: S1-5
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シンポジウム1 診療の壁を越える共通語‐IL-6を例として‐
全身型若年性特発性関節炎の病態形成因子としてのIL-6
*横田 俊平
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抄録

全身型若年性特発性関節炎(s-JIA)は、弛張熱、リウマトイド疹、関節炎を主徴とする慢性関節炎のひとつであり、約8%の患児は高熱が続いた末に予後不良となると共に身長の伸びが停止し骨粗鬆症が進行する。病勢に一致して血清IL-6/IL-6レセプター(R)の高値が認められ、実験的にもIL-6 transgenic mouseではs-JIA患児と同様な所見を呈する。そこでヒト化抗IL-6Rモノクローナル抗体(tocilizumab)によりこの過剰なIL-6/IL-6Rを遮断したところ、急速な病勢の鎮静化と身長の伸び、骨粗鬆症の改善が認められた。現在、第二相治験(open-label)と第三相治験(double-blind, placebo-controled)が終了し、さらに48週を越える長期的検討(extension study; open-label)を行っている。Tocilizumabの投薬は、1回8 mg/kgを2週間に1回の点滴静注で行った。48週時点の改善率をJIA core setでみると、JIA30, JIA50, JIA70それぞれは100%, 95%, 90%であった。当初治験参加した50例のうち48例が1年以上の継続投与を行っており、tocilizumabの著しい効果と安全性を示していた。この結果はさらにs-JIAは炎症性サイトカインのうちIL-6が主として拘わっていることが明らかになり、またモノクローナル抗体による単一分子の遮断により病態そのものが終息することから、炎症病態に拘わるIL-6の役割について改めてその重要性が明らかになった。またin vitroの検討でも、IL-6が成長軟骨の幹細胞の分化を抑制することが示され、成長、骨粗鬆症の進行にIL-6が拘わっていることが示された。

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© 2007 日本臨床免疫学会
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