主催: 大阪大学保健センター、大学院医学系研究科身体防御健康医学
疫学研究により、近年の食生活の変化が、すなわち食品に含まれるアレルギー炎症惹起物質の過剰摂取もしくは抗アレルギー作用を有する機能性栄養素の摂取不足が、アレルギー疾患の有病率を高めている重要な環境要因である可能性が指摘されている。フラボノイドを多量に含む食品の摂取試験を出発点として、以下の事を明らかとした。フラボノイドは、好塩基球においてIL-4や IL-13産生とCD40リガンドの発現を抑制する活性を有する。ルテオリン、アピゲニンとフィセチンに強い活性(IC50 = 2-5microM)が認められ、また日常摂取の多いケルセチンにも中等度の抑制活性(IC50 = 15-18 microM)が観察された。数十種類のフラボノイド及びその誘導体の活性の検討により、抑制活性に必要な分子構造が明らかとなり、その作用機序として、転写因子NFATとAP-1の活性化を抑制することが示された。フラボノイドを動物モデルマウスに投与することで、アレルギー疾患の発症を予防し、治療効果も観察されている。また、フラボノイドの高摂取群では喘息の発症率が低かった疫学研究の報告もなされており、適切なフラボノイドの摂取がアレルギー疾患に対する予防や補完代替療法となる可能性が期待される。現在、食品衛生法にて認可されているフラボノイドのアレルギー疾患に対する臨床研究と、合成した高吸収性、高活性のフラボノイドの動物実験での試験が進行中にある。