日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
ISSN-L : 1880-3296
第35回日本臨床免疫学会総会抄録集
セッションID: L-1
会議情報

ランチョン教育講演
インフリキシマブを用いた関節リウマチ治療で目指すもの~海外と日本のエビデンスを基に~
*田中 良哉
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 関節リウマチ(RA)は滑膜炎を病変の主座とし、しばしば関節外症状を併発する全身性自己免疫疾患である。RAの治療目標は疾患制御と関節破壊の進展抑制であり、メトトレキサート(MTX)を中心とした抗リウマチ薬による治療を基本とする。しかし、抗リウマチ薬では関節破壊進行を十分に抑制できないことが明らかになり、病態形成過程で中心的な役割を担うTNF-αを標的とした生物学的製剤が導入され、本邦では4年前に抗TNFαキメラ抗体インフリキシマブが市販された。
 インフリキシマブの登場は、RA治療に大きな変遷を齎した。本邦に於けるRECONFIRMスタディでは、インフリキシマブとMTXの併用により平均約10年罹患のRA患者の3割に寛解導入を可能にした。また、早期RAに対するインフリキシマブ療法を評価したASPIREスタディでは、高率な寛解導入により関節破壊を制御できることが報告され、早期からの使用が強調されるに至った。さらに、本治療による心血管障害抑制を介する生命予後の改善が報告される。即ち、インフリキシマブとMTXの使用によりRAの治療目標が、臨床症候の改善に留まらず、(1)寛解導入、(2)関節破壊進行制御、(3)生命予後改善にパラダイムシフトした。
 さらに、早期RAを対象としたBeStスタディでは、MTX+インフリキシマブで臨床的寛解導入後に50%の症例がインフリキシマブを中止して4年間寛解を維持し、17%は治療フリーにまで至った。インフリキシマブの中止後の寛解維持については、本邦でも評価が進行する(RRRスタディ)。
 以上、インフリキシマブの適正使用により、RA治療のゴールとしての臨床的寛解、画像的寛解、そして、両者の上に成り立つ完全寛解(治療フリー)の可能性が現実味を帯びてきた。インフリキシマブのポテンシャルを最大限に活かし、完全寛解を「目指した」治療の実践こそが、新たなる課題であると思われる。

著者関連情報
© 2007 日本臨床免疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top