日本臨床免疫学会総会抄録集
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第35回日本臨床免疫学会総会抄録集
セッションID: L-3
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ランチョン教育講演
ベーチェット病 -今日までに分かった免疫異常と病態およびこれからの展開-
*廣畑 俊成
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抄録

 ベーチェット病は、再発性口腔内アフタ性潰瘍、皮膚症状、外陰部潰瘍、眼病変を4大主症状とする原因不明の症候群である。特殊な場合を除き、一定の部位の炎症が慢性に持続するのではなく、急性の炎症が反復し、増悪と寛解を繰り返しつつ遷延した経過をとるのが特徴である。特殊病型として、腸管ベーチェット、血管ベーチェット、神経ベーチェットの3型があり、本症の臨床においては眼病変の治療とともに極めて重要なウェートを占める。
 本症の病因は不明であるが、HLA-B51と関連した遺伝的素因と何らかの外因が発症に関与すると考えられている。
 本症の病態形成にあたっては、Tリンパ球の異常反応に基づくサイトカインの産生に基づくと考えられる好中球の機能(活性酸素産生能・遊走能)の亢進が重要であると考えられている。患者Tリンパ球をin vitroで刺激培養すると、対照群に比して、特に連鎖球菌抗原や大腸菌抗原に対して過剰に反応してIL-6やIFN-γを産生する。同様に、患者Tリンパ球は対照群Tリンパ球は反応し得ないような低濃度のスーパー抗原Staphylococcus enterotoxin(SE)BやSEC1に対して反応して、IFN-γを産生するが、低濃度あるいは高濃度の抗CD3抗体に対する反応性は対照群と差がない。従って、ベーチェット病患者のTリンパ球の過敏反応性は、抗原レセプターを介したシグナル伝達の異常によるものと考えられる。本症の治療を考える上で、上記のような病態を頭に入れておくと理解し易い。すなわち、コルヒチンは好中球の機能を抑制し、免疫抑制薬のシクロスポリンはTリンパ球の活性化を抑制することにより、ベーチェット病の病態形成を阻害するものと考えられる。
一部の患者には、痴呆様の精神神経症状が見られ、治療抵抗性で徐々に進行し、ついには人格の荒廃をきたしてしまう(慢性進行型神経ベーチェット)。慢性進行型神経ベーチェットでは髄液中のIL-6が持続的に異常高値を示すのが大きな特徴で、メトトレキサートの少量パルス療法が有効であることが示されている。

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© 2007 日本臨床免疫学会
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