日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
ISSN-L : 1880-3296
第35回日本臨床免疫学会総会抄録集
セッションID: L-4
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ランチョン教育講演
関節リウマチ薬物治療のエビデンス -IORRAからの検証-
*山中 寿
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抄録

近年、関節リウマチ(RA)の薬物治療は大きな進展を遂げた。生物学的製剤をはじめとする新たなクラスの薬剤が投与可能となったことは進歩に大きく寄与したが、多くの疫学的研究の結果として、RAに対する治療戦略自体が大きく変わったことも忘れてはならない。確固たる治療戦略に基づき、適切な治療薬を選択することが、治療学を進歩させ、病に苦しむ患者に対しての恩恵となることは疑いない。
しかしながら、これらの臨床的エビデンスの多くは海外発のものであり、国内の臨床現場にそのまま応用できるか否かに関しては、考慮が必要な場合がある。特に、薬剤の至適投与量や安全性に関しては人種差が意外に大きいことも知られており、注意を要する。
日本の臨床医にとって必要なのは、日本人のRA患者において新しい治療戦略や新しい治療薬が有用であるかどうかの情報である。したがって、日本のリウマチ診療におけるエビデンス作りが非常に重要である。
東京女子医大膠原病リウマチ痛風センターでは、2000年からIORRA(J-ARAMIS)と名付けた大規模なコホート研究を実施している。IORRAに集積された膨大なデータを分析することにより、現在のリウマチ診療における問題点や、unmet needsが見えてくる。
現在のRA治療では、生物学的製剤などの強力な治療薬により疾患活動性を制御し、関節破壊進行を防止することによって長期的QOLの改善をはかること(Cure)が強調されている。しかしながら、既に長期にわたり罹患し、関節変形の進んでいる患者に対しては、疼痛管理を始めとする短期的QOLの改善を目指すこと(Care)もまた必要である。後者はともすれば忘れがちであるが、その重要性が減ずることはない。
本年6月、コキシブ系COX-2選択的阻害剤「セレコキシブ」が我が国においても臨床使用が可能となった。安全性の高いNSAIDが登場したことにより、RA治療のCareの部分が更に安全かつ容易になることが期待される。今後、これらの薬剤が日本人においてどれくらい有用であるかを検証することが必要になるが、IORRAのシステムを用いた検討を考えているところである。
RA診療におけるエビデンス構築について、IORRAデータを中心に解説する。

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© 2007 日本臨床免疫学会
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