目的)アデノウイルスベクターを用いたサイクリン依存性キナーゼ(CDKI)関節内遺伝子治療は関節リウマチ(RA)モデルマウスに著効する。しかし、アデノウイルスベクターは安全性に問題があるために臨床応用が困難である。近年、TNF阻害薬などの組み換え蛋白生物学的製剤がRA治療に広く用いられている。CDKIが細胞内でCDK活性を抑制して細胞周期の進行を停止させることから、細胞膜透過型CDKIタンパクの開発を目的とする。 方法)細胞膜透過性ドメイン(TAT-PTD)融合p27Kip1 CDKIタンパク(TAT-p27)を作成する。精製条件により立体構造の異なる変性・非変性型の産物をそれぞれRA滑膜線維芽細胞(RSF)の培養上清に添加し、導入効率、増殖抑制能、細胞傷害性を検討する。またCDKIはRAにおける関節破壊に関与するプロテアーゼMMP-3の産生を抑制することが報告されているため、上清中のMMP-3を測定する。 結果)TAT-p27は濃度依存的にRSFの細胞内に導入された。TAT-PTDに関する過去の報告とは逆に、非変性型は変性型より導入効率が高く、RSFの細胞増殖抑制およびMMP-3の産生抑制においても変性型の8-16倍の比活性を示した。すべての投与条件においずれのTAT-p27もRSFへの細胞傷害性を示さなかった。 考察)TAT-p27はRSFの細胞内に導入され、細胞増殖、MMP-3産生を抑制する。非変性型TAT-p27は変性型より導入効率、活性がともに高い。今後は非変性型TAT-p27のin vivo RAモデルへの応用を図りたい。