主催: 大阪大学保健センター、大学院医学系研究科身体防御健康医学
【目的】非選択的エンドセリンレセプター拮抗剤であるボセンタンの免疫調整剤としての役割を検討した。【方法】肺高血圧症を伴う全身性強皮症10例に対し、ボセンタンを投与した。投与前後で血清を採取し、Th1サイトカインであるIL-2、IL-12、IFN-γ、Th2サイトカインであるIL-4、IL-6、IL-10をELISA法により測定した。また、ボセンタンの臨床的効果を検討するため、投与前後で心エコー上での推定右室圧、6 分間歩行距離(6MWT)、血漿BNP濃度を比較した。【結果】平均観察期間は5.8ヶ月であった。推定右室圧は投与前の49mmHgから37mmHgへ有意に低下した。6MWTではボセンタン内服後に平均14%、約61m歩行距離が延長し、血漿BNP濃度は低下する傾向があった。Th2サイトカインであるIL-6、IL-10はボセンタン投与前後で変化はなかった。一方、Th1サイトカインであるIL-12はボセンタン投与により有意に上昇した。IL-2、IL-4、IFN-γは測定感度以下だった。ボセンタン投与後の血清IL-12濃度と推定右室圧は負の相関を示す傾向があった。【考察】過去の我々の検討で、IL-12の上昇は臨床症状の改善とともにみられることが明らかになった。ボセンタンはサイトカインバランスをTh2からTh1にシフトさせている可能性があり、ボセンタンにはエンドセリン拮抗剤としての作用のみならず、免疫調整剤としての機能も有していることが示唆された。