主催: 大阪大学保健センター、大学院医学系研究科身体防御健康医学
【目的】多発性硬化症(MS)をはじめとする自己免疫疾患の発症には、遺伝的素因と環境的素因が関係しているといわれている。後者として、近年、腸内フローラが種々の自己免疫疾患やアレルギー疾患において注目されている。そこで我々は、MSの動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を用いて、腸内フローラの変化が宿主に及ぼす免疫学的影響について検討した。 【方法】C57BL/6Jマウスに腸管非吸収性の抗生物質を7日間経口投与したのち、腸内フローラの変化をDNAマイクロアレイにて調べた。また、腸管膜リンパ節(MLN)からリンパ球を分離し、T細胞のサイトカイン産生及び増殖能について比較・検討した。さらに、MOG 35-55 ペプチドでEAEを誘導し、臨床スコアと病理所見を検討した。 【結果】抗生物質投与により腸内フローラは著明に変化していることがわかった。免疫学的には、抗生物質投与群ではMLN由来のT細胞の増殖能は低下し、TNF-α、IFN-γ、IL-17などの炎症性サイトカインの産生は有意に抑制されていた。また、同群ではEAEが有意に軽症化した。 【考察】抗生物質投与による腸内フローラの変化が腸管上皮や抗原提示細胞などを介して宿主の腸管免疫システムを修飾し、さらに腸管膜リンパ節を介してsystemicな免疫システムに影響を及ぼしている可能性が示唆された。