主催: 大阪大学保健センター、大学院医学系研究科身体防御健康医学
炎症は、Th1, Th17,TregといったヘルパーT細胞(Th)の分化を通してサイトカインにより制御されている。サイトカインシグナル伝達の阻害分子であるSOCS-1 KOマウスは、IFN-γシグナルを制御出来なくなるため、Th1に過剰にシフトし、そのため多臓器に及ぶ炎症が惹起され、周産期致死に至る。そこで、IFN-γの影響を排除しTh1への過剰なシフトを除くことにより、周産期致死を回避させたSOCS-1/IFN-γDKOマウスを用いて、SOCS-1のTregおよびTh17産生に及ぼす影響を解析した。結果、SOCS-1/IFN-γDKOマウスのTregはコントロールであるIFN-γKOマウスに比較して、有意に増加し、SOCS-1はvivoでTreg産生を制御することが示された。しかし、SOCS-1 KOマウスのTregはコントロールと比較して減少しており、過剰なIFN-γのシグナル伝達はTreg産生を制御することが示された。また、生後4-6月のSOCS-1/IFN-γDKOマウスは、CD4Tcellから産生されるIL-17の増加を伴った慢性炎症を皮膚や肺などの臓器に来たし、SOCS-1はvivoでTh17産生を制御することも示された。最近、TregがTh17の産生を抑制する報告がある。これらの結果から、SOCS-1はTh1分化の制御のみならず、TregやTh17産生を含めたTh応答を介して、炎症を制御すると考えられ、SOCS-1が様々な炎症性疾患に対する分子標的治療法の良い標的分子になりうることが示唆された。