主催: 大阪大学保健センター、大学院医学系研究科身体防御健康医学
多発性筋炎(PM)/皮膚筋炎(DM)は、膠原病内科、皮膚科、神経内科で診察されており、まさしく診療科を超えた疾患であることから、その分、研究が遅れてきた。
我々は、骨格筋内のC蛋白が、遺伝学的研究の容易なB6マウスでも免疫原性が高いことを見出し、組換えC蛋白をマウスに免疫することで新たなPMモデル(C-protein induced myositis(CIM))を確立することに成功した。CIMマウスの筋組織は、PMと同様に、筋傷害の場である筋内膜にCD8T細胞が多く浸潤してパーフォリンを放出しているなど、細胞傷害性CD8T細胞が筋傷害の原因と考えさせる点で、従来のPMモデルマウスとは一線を画している。実際にCD8T細胞を前処置により除去すると筋炎は軽快し、CIMマウス由来のCD8T細胞の養子移入で、ナイーブマウスに筋炎が発症する。
一方、様々な炎症に関与することが知られるInterleukin(IL)-6は、PM/DMの筋組織中に浸潤する炎症細胞に発現され、CIMマウス炎症筋組織の免疫組織学的解析でも、炎症細胞にIL-6発現が認められた。また、IL-6欠損マウスでは、野生型マウスと比較してCIMの発症頻度が低く、筋炎の程度も軽かった。そこで、IL-6阻害薬である抗IL-6受容体抗体(MR-16)を、免疫時から投与(100-200mg/kg、腹腔内投与)すると、CIMは抑制された。
近年、IL-6は、自己免疫反応の鍵となるTh17の誘導に重要な分子であることが明らかにされ、我々もIL-17のCIM病態への関与を検討中である。しかし、MR-16の効果は、筋炎発症後(免疫7日目)からの投与でも免疫時投与と同様に認められたことから、IL-6は、自己反応性T細胞誘導以外の病態でも重要と考えられ、よりよい治療標的となると思われる。