主催: 大阪大学保健センター、大学院医学系研究科身体防御健康医学
【目的】タクロリムスはわが国で開発された免疫抑制薬であり、近年、関節リウマチ(RA)及びループス腎炎に対する臨床的意義が注目されている。しかし、有害反応に関する報告は少ない。そこで、RA及び全身性エリテマトーデス(SLE)患者におけるタクロリムスの有害反応を検討した。【方法】当科にて1~3mg/日のタクロリムスの治療が開始されたRA患者42例と、SLE患者10例について、レトロスペクティブに有害反応と背景因子を検討した。【結果】RA患者のタクロリムス開始後の観察期間は平均157±131(SD)か月であり、その間に24例が中止されていた。中止時期をKaplan-Meiyer法で検討すると、投与開始後60日以内とそれ以降の2群に分けられた。60日以内中止例は13例であり、そのうち12例が有害反応によった。原因としては、消化器症状、特に嘔気・嘔吐の頻度が高かった。一方、SLEでは、12か月の観察期間で胸痛と感染症による中止例が各々1例認められたが、消化器症状による中止例は認めなかった。タクロリムス初回投与量2mg/日以上のRA患者群では、2mg/日未満群に比べて、有意に消化器症状の発症頻度が高かった。【結論】SLEとは異なり、RAにおけるタクロリムスの中止例は、投与開始後60日以内に発症した消化器症状によることが多く、発症頻度は用量依存性であった。