主催: 大阪大学保健センター、大学院医学系研究科身体防御健康医学
ICUに入室している重症例が呈する敗血症性ショックなど多くの病態は、全てその背景にhypercytokinemia(HC)が存在するといっても過言ではない。しかし従来cytokine血中濃度を測定し、それに基づいて治療方針を決定し、HC対策を行うという治療方針は行われて来なかった。その理由としてはcytokineの血中濃度を日常臨床で有用な形で測定する方法が得られなかったからである。我々は本学中央検査部と共同でchemiluminescent enzyme immunoassay (CLEIA)法を用いたIL-6迅速測定法を導入し、ICU患者においてIL-6血中濃度を連日測定している。この方法により採血後約30分でIL-6血中濃度を知ることができ、それに基づいて治療方針を決定出来るようになった。特に全身性炎症反応症候群(SIRS)なる病態概念やその重要性が確立し、かつSIRSの根底にあるものはHCであることが明らかになるにつれて、IL-6血中濃度測定の意義は更に大きいものとなった。 IL-6血中濃度はICU入室症例のmodalityやmortalityとも良く相関した。またPMMA膜hemofilterを用いたcontinuous hemodiafiltration (PMMA-CHDF)は、持続的、かつ効果的に血中より各種cytokineを除去すること、さらにHCにより引き起こされる各種の病態の治療に有効であることをわれわれは報告してきたが、その開始時期、終了時期、効果判定にもIL-6血中濃度測定は極めて有用であった。最近ではcytokine産生に関わる遺伝子多型の有無をもチェックし、その結果を基にtailor-madeのHC対策も施行している。 以上、IL-6血中濃度測定はcritical care medicine領域でも極めて有用であることを我々自身のデータに基づいて報告する。