日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
ISSN-L : 1880-3296
第37回日本臨床免疫学会総会抄録集
セッションID: S1-1
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シンポジウム1 ゲノム医科学と自己免疫疾患
膠原病のポリジーンネットワーク
*能勢 眞人
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抄録
膠原病は、結合組織疾患、リウマチ性疾患、自己免疫疾患の3つのカテゴリーを満足する疾患とされる。しかし、膠原病の病態・病理像の多様性は、膠原病が独立した疾患の寄せ集めである為なのか、それとも何らかの生物学的必然性の結果なのか、という問題は、Klemperer による膠原病の提唱以来未解決で重要な課題である。従来、疾病の原因を究明する方法として、疾病個体の特定の物質を正常個体へ移入することによる疾病の再構築が、実験医学のセントラルドグマであった。この原理は、自己免疫病においても、血清やリンパ球の正常個体への移入による疾病の再構築が、Witebsky & Milgromにより自己免疫疾患の条件として挙げられ、さらにゲノムでは胚工学の発展に支えられ、特定の遺伝子の強制発現や削除による単一遺伝子モデルも報告されてきた。
 腎炎のみならず血管炎、関節炎、唾液腺炎などの一連の膠原病を同一個体に発症するMRL/lprマウスにおいても、突然変異遺伝子Faslprによる単一遺伝子疾患とされていたが、個々の病変の感受性遺伝子座をマッピングし、位置的候補遺伝子を解析して得た我々の結論からは、膠原病の病像多様性はMatherが提唱した「ポリジーン系遺伝」の概念に従うものであった。即ち、ある閾値に規定された量的形質は単一の遺伝子(ポリジーン)のみでは発現しがたく、複数の遺伝子の組み合わせにより相補的にはじめて発現する、ポリジーンにおこる突然変異は、その作用が小さいため潜在的に変異を集団に伝え適応性の幅を広げる効果をもつ、というものである。従って、膠原病の病像の多様性は、膠原病が独立した疾患の寄せ集めであるためではなく、同義遺伝子として集団内に潜在的に分布するポリジーンの組み合わせにより必然的に生み出されるものと考えられた。膠原病のこのシステムを膠原病のポリジーンネットワークと呼ぶ。
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© 2009 日本臨床免疫学会
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