【背景と目的】自己免疫疾患である橋本病(HD)の重症度やバセドウ病(GD)の難治性には患者によって大きな個体差がある。我々はこれまでに、IFN-γ、IL-4, TGF-β、IL-1β、TNF-αなどの遺伝的産生能やFoxP3の遺伝的発現能がHDの重症度やGDの難治性に影響することを見出し、自己免疫疾患の予後が遺伝的な個体差を用いて予測できる可能性を示した。本研究ではTh2サイトカインであるIL-5, IL-6, IL-13をコードする遺伝子における多型がHDやGDの病態予後に関連する可能性を検討した。
【対象と方法】HD患者の重症例(50歳未満で甲状腺機能を発症した患者)52名、軽症例(50歳を超えても甲状腺機能が正常な患者)56名、GD患者の難治例(5年以上の抗甲状腺剤治療でも寛解導入でない患者)57名、寛解例(抗甲状腺剤治療により5年以内に寛解導入した患者)52名、健常人91名のゲノムDNAを対象とし、目的とする遺伝子に存在するIL5-746C/T、IL6 -572C/G、IL13 -1112C/Tの3か所の機能的な一塩基多型をRFLP法でタイピングした。
【結果】(1) IL-13の高産生能に関連する-1112TalleleはGD寛解例において難治例より高頻度にみられた
(2) IL-5の産生能が低いと予測される -746TalleleはGD寛解例で健常人より高頻度にみられた
(3) IL-6の高産生能に関連する-572Gallele 保有者(CGおよびGGgenotype)は、特にGD寛解例とHD重症例で高頻度にみられた
【結論】Th2細胞から産生されるIL-5, IL-6, IL-13の機能的多型はGDやHDの発症や病態予後に関係していた。