老年歯科医学
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調査報告
パーキンソン病患者の流涎と摂食・嚥下障害の関係
梅本 丈二北嶋 哲郎坪井 義夫喜久田 利弘
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2009 年 24 巻 3 号 p. 306-310

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抄録

パーキンソン病患者の流涎と摂食・嚥下障害との関係を評価する。対象は福岡大学病院歯科口腔外科で嚥下造影検査 (VF) を行ったパーキンソン病患者16名 (男性7名, 女性9名, 平均年齢67.3±8.0歳) とした。Hoehn & Yahrの重症度分類では, StageIIIが9名, IVが6名, Vが1名であった。患者への問診から流涎の重症度を5段階, 頻度を4段階にスコア化した。また, 側面VF画像から口腔咽頭通過時間, 舌運動速度, 下顎運動速度を解析し, さらに口腔期の嚥下障害を37点満点でスコア化した。流涎の重症度は, 口唇のみが7名 (44%), 衣服まで及ぶものは4名 (25%) であった。流涎の頻度は, 「ときどき」が8名 (50%), 「しばしば」という患者が4名 (25%) であった。流涎スコアと口腔咽頭通過時間の間に有意な相関関係を認めた (r=0.659, p=0.011)。また, 口腔期嚥下障害スコアと口腔咽頭通過時間 (r=0.540, p=0.037), 舌運動速度と口腔咽頭通過時間 (r=-0.522, p=0.046) の間には有意な相関関係が認められた。パーキンソン病患者の流涎は, 舌などの動作緩慢による唾液の送り込み障害が一因となっている可能性が示唆された。

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© 2009 一般社団法人 日本老年歯科医学会
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