日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
ISSN-L : 1880-3296
第39回日本臨床免疫学会総会抄録集
セッションID: SS-3
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免疫疾患のトピックスと将来展望
炎症性腸疾患における免疫学的病態の解明
*日比 紀文
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キーワード: 炎症性腸疾患
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抄録

狭義の炎症性腸疾患(IBD)はクローン病(以下CD)と潰瘍性大腸炎(以下UC)に分類される。我が国の患者数は増加傾向にありCDで3万人、UCで13万人を超えた。IBDは遺伝的素因、環境因子、腸内細菌と宿主との関係などが複雑に関与し腸管の免疫学的バランスが崩れ慢性炎症が持続すると考えられている。近年のGWASの結果から多くのIBD疾患感受性遺伝子が同定されている。伝子操作マウスを用いた研究からは腸管免疫の破綻により腸炎が発症すること、腸炎発症には腸内細菌の存在が必須であることが報告されている。いっぽうでこれらの結果をもってしてもいまだヒトIBDの病態を完全に説明することはできていない。CDは全消化管に発症しうる全層性炎症を特徴とする疾患で腸管局所ではTh1優位の免疫異常が存在する。我々は腸管局所Msが腸内細菌認識において恒常性維持に極めて重要な働きをしていること、さらにCDの腸管Msは腸内細菌刺激に対し過剰なTNFα、IL-23を産生し病態に関与していることを明らかにした。いっぽうUCは直腸から連続するびまん性粘膜炎症が特徴であるが、臨床病理学的特徴の一つとしてIgG産生型形質細胞浸潤を認める。この現象の意味は謎であったが我々の研究からこの細胞群はある特定のケモカイン受容体を介して腸管にホーミングし免疫複合体を形成して病態に関与している可能性が解明されつつある。

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© 2011 日本臨床免疫学会
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