日本臨床免疫学会総会抄録集
Online ISSN : 1880-3296
ISSN-L : 1880-3296
第39回日本臨床免疫学会総会抄録集
セッションID: SS-5
会議情報

免疫疾患のトピックスと将来展望
女性生殖器の粘膜免疫:異個体の受容と共生
*早川 智
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
 泌尿生殖器粘膜は固有の粘膜免疫系を形成する. 特に女性生殖器は精密な内分泌支配を受け,病原体を拒絶しつつも同種異個体に由来する精子、さらに妊娠時には胎児胎盤を受容するという特性を有する. 従ってその理解はHIVやクラミジア、HPVなどの性行為感染症や不妊・流早産など異常妊娠の診療に重要である。進化生物学的には、子宮内で胎児・胎盤を育てる真胎生というシステムは単孔類を除く大部分の哺乳類で見られるが,哺乳類特有ではなく,他の脊椎動物門のみならず一部の無脊椎動物にも存在する.一方、特異免疫系は軟骨魚類のレベルで進化したシステムであり,真胎生を行う脊椎動物は父親由来の抗原を有する胎児に対する寛容の成立が重要な課題となる.  母子免疫寛容は1953年にMedawarが問題提起を行って半世紀の間、生殖免疫学の主要課題であったが、近年,制御性T細胞やIDO, non classical MHCなど拒絶回避機構の多くが解明されるに至った.興味深いことにその多くは悪性腫瘍が拒絶を免れるために使用するメカニズムと一致している.悪性腫瘍の立場からすると,新たな免疫回避を発明するよりは,胎児胎盤が母体の拒絶を免れるシステムを用いたほうが効率がよいということになる.この事実から,脊椎動物における悪性腫瘍の頻度増加は胎児胎盤の生着を許すような抑制性免疫システムの進化に依存する,言い換えれば進化の上でのトレードオフになっているのではないかという仮説を導くことができる.
著者関連情報
© 2011 日本臨床免疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top