抄録
私たちが先駆的に行ったT細胞認識ヒトがん抗原の同定は、患者体内での抗腫瘍免疫動態の測定を可能にし、免疫によるがん細胞排除に至る各段階での問題点が明らかになりつつある。また免疫学の進歩により、新しい免疫制御法の利用が可能になってきた。がん免疫療法開発では、標準治療後にがんワクチンなどの簡単な方法で再発予防や延命を目指す方向と、標準治療では効果が得られない進行がんに対して腫瘍縮小や治癒を目指す方向がある。特に後者では抗腫瘍免疫応答ネットワークの総合的制御が重要である。我々は、1)がん細胞の増殖や生存に関与し、がん幹細胞にも発現するヒトがん抗原の同定、2) 内在性がん抗原に対して免疫誘導を起こす生体内腫瘍破壊法の開発、3) がん特異的T細胞を誘導する樹状細胞の制御法の開発、4) ヘルパー/キラーT細胞の体内増殖活性化法の開発、5) がん細胞による免疫抑制抵抗性の分子機構の解明と克服法の開発などの要素技術の開発とその適切な組み合わせによる効果的ながん免疫療法の開発を進めている。世界的にも、単純ながんワクチンだけでなく、抗CTLA-4抗体や抗PD-1/PD-L1抗体による免疫増強や培養T細胞を用いた養子免疫療法などが進められている。最新の養子免疫療法では、進行悪性黒色腫に対して93例中20例に長期CRが認められ、治癒効果が期待されている。現在、企業も積極的に免疫療法の開発に参画している。