抄録
【背景】関節リウマチ(RA)は骨破壊を来す自己免疫疾患であり,炎症のみならず骨修復を視野に入れた治療が要求される。我々は間葉系幹細胞(MSC)を用いた炎症制御と骨再生を考慮しているが、炎症下におけるMSCの骨芽細胞分化については不明な点が多い。
【目的】炎症の存在下におけるヒトMSCからの骨芽細胞分化について検討する。
【方法】ヒトMSCを骨芽細胞分化誘導刺激下にTNF-α,IL-1β,IL-6,IL-17を添加し,骨芽細胞分化につき評価した。
【結果】ヒトMSC にサイトカインを添加すると、IL-1β,TNF-α,IL-6の順に強く石灰化を誘導し,とりわけIL-1βはより低濃度で7日目のより早期から石灰化をもたらした。未添加と比較して10日間の短縮が可能であった。ヒトMSCにおける骨芽細胞分化マーカーは全てのサイトカインで発現が誘導され,その効果は石灰化と同様の傾向であった。骨形成に重要な役割を果すWnt familyのなかでWnt5aのみの発現を認め、その受容体であるRor2と共にIL-1βにより強く発現が誘導された。ヒトMSC にRor2 siRNAを導入すると石灰化は完全に抑制され,Wnt5a/Ror2経路がIL-1βによる骨芽細胞分化促進に重要と考えられた。
【考察】炎症性サイトカインの存在下でヒトMSCの骨芽細胞分化は促進されることが示された。我々はのヒトMSCによる破骨細胞分化抑制作用に関する報告,既知の抗炎症作用と併せて、MSCは骨破壊抑制,骨再生の観点からRAの新規治療戦略として最適と考えられる。