抄録
関節リウマチ(RA)をはじめとする各種炎症性疾患において、「感染症」は最も注意すべき合併症であるが、原病増悪と感染症合併の鑑別に苦慮することも多く、簡便な感染鑑別マーカーが期待される。我々はRA患者において末梢血好中球上CD64分子の定量が原病の活動性に左右されない有用な感染症マーカーであることを報告してきた(J Rheumatol. 2006;33:2416-24)。CD64(FcγI)は単球、マクロファージ、好酸球上には恒常的に発現しているが、好中球上の発言はわずかであり(通常2000分子/cell未満)、細菌成分(LPSなど)やIFN-γ、G-CSFなどの刺激により発現が誘導される。RA患者における検討では、CD64の感染症検出能力は感度92.7%、特異度96.5%、PPV87.9%、NPV98.0%であり、ステロイドや免疫抑制剤、トシリズマブを含む各種生物学的製剤などの薬剤による影響もなく、結核菌、非結核性抗酸菌、グラム陽性・陰性菌、ウイルス、真菌など、幅広い病原体感染での有用性が確認されている。病原体別CD64発現量は、ウイルスで低く結核菌で高い傾向を示すが、バラつきも多いため、病原体鑑別までのポテンシャルはない。血管炎や間質性肺炎の合併、RA以外の膠原病では偽陽性が、検査前の抗生剤使用では偽陰性が増加するなどの弱点もあるが、術前・周術期での感染モニタリングや生物学的製剤使用中の感染治癒判定などにも有用であり、実地では非常に心強いマーカーである。好中球CD64測定は各種感染を幅広く検出しうる点が特徴と言えるが、RA以外での幅広い有用性が期待される。