抄録
腫瘍抗原を標的としたペプチドワクチンは,抗原ペプチド特異的CTLを増殖活性化させることで腫瘍拒絶を目指す治療法である.ペプチド特異的CTLはTCRを介して腫瘍表面に発現するHLA/ペプチド複合体(HLAp)を認識して,腫瘍を殺傷する.そのため抗腫瘍効果を得るためには,腫瘍細胞表面に標的のHLA/ペプチド複合体が発現していることが前提となる.しかし腫瘍細胞における標的のHLA/ペプチド複合体の検出には抗原特異的CTLクローンの樹立と可溶性TCRの作製が必要であり,これには多大な時間と労力を要する.今回我々は腫瘍における標的HLA/ペプチド複合体の効率的な検出・定量を目指して,TCRに類似するHLA/ペプチド複合体特異的抗体(TCR類似抗体)の作製を骨肉腫抗原PBFをモデルとして試みたので報告する.始めにナイーブドナー36人の末梢血単核球と2人の摘出扁桃のRNAよりsingle chain variable fragment(scFv)ファージディスプレイライブラリ(1x108)を作製した.次にscFvを発現するライブラリファージと抗原のパニングを行った.抗原にはビオチン化HLApモノマー(HLA-A24/PBFA24.2ペプチド,HLA-A2/PBFA2.2ペプチド)を用いた.3-4回のパニングの後,scFvファージ 94クローンをELISAでスクリーニングしてHLA-A24/PBFA24.2に反応する2クローン,HLA-A2/PBFA2.2に反応する3クローンを同定した.これらのクローンのscFvをヒトIgG1サブタイプに変換してFACS解析を行った.結果,1クローンがペプチドをパルスしたT2細胞を認識した.これらのTCR類似抗体は,腫瘍細胞表面のHLApを検出する上で今後有用と考えられた.またこれらの知見はTCR類似抗体を発現する人工CTLの開発につながる.