2012 年 40 巻 4 号 p. 185-194
脳内の電気生理学的活動源の挙動や特性を脳電磁図の測定信号から求めようとする際には, ある逆問題解法を用いて信号源の推定を行い, 次に, 得られた推定信号源に対して時間–周波数解析や相互相関解析などを行っている。しかしこの場合, 各解法の推定精度がその後の解析結果を左右してしまうこととなる。そこで本研究では, 測定信号に対して, 直接, 時間–周波数解析や相互相関解析などを先ず行い, その解析結果に基づき, 測定信号に対して多次元重みづけを施すことで, 特定の信号源を選択的に推定する手法を提案する。すなわち, 予め目的とする信号の特性をある程度限定・強調すると同時に, それ以外の信号を抑圧することで, 信号源推定の精度を向上させることができる。本報では, その適用例として, 異なる周波数で互いに相関を示す複数の脳内活動源の推定を取り上げ, 脳波のシミュレーションデータを用いて, 具体的な解析および推定の手順とその結果を示す。