2012 年 40 巻 6 号 p. 527-534
絶対音感とは他の基準となる音を頼りにせず音名を言い当てることのできる能力である。我々はミスマッチ陰性電位 (MMN) を用い, 絶対音感保持の有無による「12音階の構成音 (音階内の音) 」と「それ以外の音 (音階外の音) 」の聴覚の前注意的な情報処理の差を調べた。絶対音階保持者 (AP) 群12名と非保持者 (NAP) 群14名を対象とした。刺激はヴァイオリン音で2セット作成し, 1セット目は「音階内」のみで作成し, 標準刺激を442 Hz (音名でラ), 逸脱刺激は496 Hz (音名でシ) とした。2セット目は「音階外」のみで作成し, 452 Hz (ラとシの間の音) と509 Hz (シとドの間の音) とした。NAP群では音階内の音と音階外の音で同程度のMMN振幅を示したが, AP群では音階内では音階外に比べてMMN振幅が低下した。今回の結果からAP群は音階に関する潜在記憶が発達していることが示唆された。